火星に住むつもりかい?

「火星に住むつもりかい?」を読みました。ディストピア小説です。「1984年」と同じように監視社会、チクリ社会の未来を暗示した小説です。仙台が監視地区に指定され、安全警察という組織が住民の告発を集めて、無実の人間を処刑する物語です。魔女狩りの現代版を描写しています。処刑をのぞむのは民衆です。拷問の場面はリアルで途中読むのをやめようかと思いました。「正義の味方」ヒーローも普通の人です。結局、世は事もなしということになります。正義となにか? 権力掌握とはなにか? 人間行動の本質は何か? 解答は読者に委ねられています。

火星に住むつもりかい? (光文社文庫)

火星に住むつもりかい? (光文社文庫)

第四間氷期

「第四間氷期」を読みました。安部公房の約50年前の小説です。傑作です。50年経っても全く違和感がありません。この小説に書かれている未来予想機を使って小説を書いたのではないかと思えるほどです。すべての地表が海に覆われる事態に人類のとった対策とは? ディストピア小説として秀逸な作品とういばかりでなく、理不尽に対する人の心の動きの描写に深く納得がいきました。私なりにロボットの未来を考えてみたくなりました。

第四間氷期 (新潮文庫)

第四間氷期 (新潮文庫)

饗宴

プラトンの「饗宴」をキンドルで読みました。昔、途中で挫折しましたが、今回の「饗宴」は解説も含めて非常にわかりやすい訳になっています。現代の日本人が理解できるような易しい言葉で翻訳しています。解説部分で男同士の愛について詳しいので、これまでその部分は現代に合わないのかなという気がしておりましたが、現代のホモセクシュアルとはまた違うということを理解しました。日本で言うところの「若者宿」だったようです。

「饗宴」のあらすじ。宴会の席でエロス賛美の演説 を行うこととなる。パイドロス、パウサニアス、エリュクシマコス、アリストパネス、アガトンが順に演説を行う。そしてソクラテスが演説する。ソクラテスは自分の説ではなく、覚醒者ディオティマに聞いた説として、愛の教説を語る。愛(エロス)とは欠乏と富裕から生まれ、その両方の性質を備えている。ゆえに不死のものではないが、神的な性質を備え、不死を欲求する。愛には幾つかの段階があり、生物的な再生産から、他者への教育による再生産へと向かう。愛がもとめるべきもっとも美しいものは、永遠なる美のイデアであり、美のイデアを求めることが最も優れている。これを求めることこそがもっとも高次の愛である。演説後、アルキビアデスが乱入する。アルキビアデスはすでに酔っており、ソクラテスとの愛の経緯と戦場でソクラテスの態度がいかに立派なものであったかを語る。饗宴は、夜通し続き、みなが寝静まったところに、ソクラテスは酔うこともなく出て行く。

プラトンのエロスの本質、イデアの考え方を理解しました。それにしてもアリストファネスのエロスは欠落を求めると言う論は魅力的でした。足りないところを余っているところで塞いで完全にすると言う古事記イザナギイザナミノミコトにつながるように感じました。それぞれの論を否定するでもなく、覚醒者ディオティマの口を借りて高みに引っ張っていく論建てに小気味良さを感じました。ソクラテスは著作を残していませんがプラトンという優秀な弟子を得て非常に良かったと思います。プラトンから見てソクラテスは重要なメンターです。「ソクラテスの弁明」を読んだ時も感じましたが、プラトンラはソクラテスから大きな影響受けています。ソクラテスプラトンそしてアリストテレスにつながるギリシャの3大哲学者が同時代に出現したのは影響しあってそうなったとも言えるかもしれません。またインドの釈迦、中国の孔子など、現代の哲学の基礎をなす巨人たちが、ほぼ同じ時代に生まれたことに驚きを禁じません。 備忘します。

饗宴 (光文社古典新訳文庫)

饗宴 (光文社古典新訳文庫)

アリストファネスの話は 、エロスをより人間的な文脈に近づけたものだといえるでしょう 。また 、アリストファネスの論点は 、その後のディオティマの議論に引き継がれていく側面を持ちます 。すなわち 、エロスの本質は欠如にあるという発想です 。これは 、それまでの演説では見られなかった発想であり 、アリストファネスの直観的な想像力によって 、初めてもたらされた視点です 。この点で 、ディオティマのエロス論は 、アリストファネスのエロス論の発想を引き継いでいるといえそうです 。ページ83%

大泥棒

「大泥棒」を読みました。大著ですが、非常に面白く読み耽ってしまいました。著者は「犯罪行動生態学」の日本の権威だそうです。二人の大泥棒の文書と聞き取りをもとに犯罪を体系づけています。たくさんのフィールドワークに裏打ちされた労作です。泥棒のみならず、性犯罪など犯罪者の心理を読み解いています。誰でも犯罪者になる要素があること、そのきっかけを作らないことが大切だと説いています。それにしても一流の大泥棒は心理学者にして素晴らしい運動能力を有していることを知り愕然としました。「人を見たら泥棒と思え!」備忘します。

大泥棒 ―「忍びの弥三郎日記」に賊たちの技と人生を読む

大泥棒 ―「忍びの弥三郎日記」に賊たちの技と人生を読む

賊は様々にイメージされるが、「賊の精神」「賊の身体」「賊の知識」そして「賊の見る社会の来し方、行く末」についてしのびの弥三郎や猿の義ちゃんを通し、いきた定義をしておこう。辞書的に言うなら、賊とは「他人に危害を加えて他人の財物を略奪破壊役したりする者」と表現される。
凶賊は、「乱暴でむやみに人を傷つけたり殺したりする賊」であり、忍びの弥三郎や猿の義ちゃんが言う賊は「決して被害者の身体に危害を加えず盗る」のである。ページ51
絶え間ない緊張にさらされている表の日常生活と、「私を縛る社会的くびきが溶けてしまい何でもあり」の裏の非日常生活が混在している今日の社会では、猿の義ちゃんが言うように「ぐぐっとこらえる」ことのできない人間は、平凡な生活を過ごしているように見えて、いつ犯罪者と化してもおかしくない。そういう意味で私たちは、今は犯罪者ではなくても、いつ犯罪者化してておかしくない日常を過ごしてる。ページ108
…彼ら賊の精神は、一見「御上さま意識の権力追従的、かつ周りに同調的」であるが、職人としてこの世界の最高位にある賊としての「隠された自尊心」に支えられて「見栄張り」である。この隠された自尊心に触ると、心底にある「社会的にはもう失うものはない」というアウトロー的精神、そして日常の過度の抑制、半端者という「深いコンプレックス」が相互に影響しあい、周りから見れば突然わけがわからず「キレる」状態へと陥っていく。ページ115
中学までの学校や家庭の何が問題なのか。答えは5歳までの親子の関係で、5歳になるまで親がきちんと子供に向き合って、時には暖かく、ときには世の中の常識を厳しく体得させようとしているか否かである。…男親なら男の子の子育てに関わっているか否かである。注意しなければならないのは子供にとって親はいるけれどないということである。家庭には、基本的に父親という人間か母親という人にしかいない。ページ132
人間は悪さを働くものである。しかし、多くの人を犯罪者になることなく人生を終える。だからこそわれわれは、彼もしくは彼女はなぜ犯罪をはたらくのかではなく、なぜ悪さを働かないのかに注目すればならない。…最終的に必要なのは、自己統制を外してしまう「ちょっとした機会」の存在だけだ。ともかく、人間にその機会さえ与えれば、どこにでも犯罪者は誕生するし、被害者も生じる。結果として犯罪はどこでも起きるということは心のに深く留めておこう。ページ171
どんな家屋が狙われるか?…非常に興味深く、掲載することに大きなためらいを生むのは、忍びの弥三郎の次の記述である。密集した民間、または商店街が道路を挟んで立ち並んでいるわけであるが、三叉路、十字路、Y字路、T 字路または、多く交差するその中心点より近い家屋がえてして狙われやすい。これは足自身の逃避口に神経を固守するためである。ページ284
これまで述べてきたように、犯罪者の行動は被害者の手前500メートルから始まり、被害者直前の0メートルで襲撃に至る。その行動を止めるには、20メートルという距離に注目しなければならない。犯罪者と被害者が顔を合わせるゼロメートルでは、もうどうにもならない。その20メートルの犯罪者の心理は、いい獲物があるか、見咎められないか、そしてやりやすいかの3点に絞られる。 …すなわち、この「やりやすい」ことこそが標的を目の前にした犯罪者を「やるぞ!」という行動に押し出していく最終心理である。ページ323
「やりやすい」を構成する1つとして「近づきやすい」がある。。この「近づきやすい」は、①機械と死角が多い ②標的が必ずそこを利用する、そこにいる ③加害者、被害者だけの閉じた空間の三つから構成され、その一つでも存在した場合、「やりやすい」と犯罪犯罪者は判断。2つ以上あれば最高だという。ページ327
犯罪者は理屈ではなく「ここはやりやすい」というイメージを直感的に抱く。このことが行動へと駆り立てる補強作用をする。…直感というイメージは①街が汚れてる ②人が人に無関心 ③恐れを生み出すものがない ④人が汚れている の四つから構成される。この内1つでも犯罪者にイメージ日目されればやりやすいことになる。ページ332
「目的の家屋の構造が賊の侵入を助けるものであってはならない」という表現は、いわゆる家屋が構造的に有する「死角」の存在を意味する。「死角」とは被害者が生み出す「隙間」である。隙間には①心の隙間 ②時間の隙間 ③空間の隙間そして④社会の隙間の4つがある。この隙間のそれぞれが、犯罪者に犯罪実行の機会を与える。被害者にとって大切なのはいかに「隙間=死角」を作り出さないかである。ページ338
こうした状況に備えるため、防犯ブザーを就寝前に布団の中や脇に備えることをお勧めする。特に高齢者あるいは女性で、かつ独居者ならなおさらだ。そのブザーの紐を引いて鳴るのをふすまや遠方に投げ、「ガタン」と音をさせること。できればそのブザーは。音と同時に発光するものが望ましい。ページ406
防犯ブザーを活用した「釣り糸センサー」…この釣り糸センサーは自分でセットでき、経費は千円もしない効果抜群な簡単手作りセンサーである。ページ407

血栓に打ち勝つ健康習慣

シンポジウム「血栓に打ち勝つ健康習慣」を聞きました。日本ナットウキナーゼ協会・読売新聞の共催です。場所は私の会社から歩いて3分「カルッツかわさき」(13:30~15:30)の大ホールでした。無料ですが、4500人の応募があったそうで、今日は2000名の人が招待されていました。私は高校の友人から「出席できなくなった、近所だから行ってみたら」との誘いで聞いてきました。聴衆は私よりちょい上の年代でした。ようするに暇な人たちです。
基調講演は東京医大の浜岡教授が「脳血栓心筋梗塞」の予防法をひとくさり。生活習慣(運動・栄養・食事)に気をつけて、適度な飲酒、禁煙が大事、夏は水分補給に気をつけるようにとの宣託でした。ナットーキナーゼは特異的に血栓を分解する、納豆は固める因子ビタミンKが含まれているので、サプリメントから摂取したらよいとちょっぴり宣伝していました。
トークコーナーでは、協会のイメージキャラクター中井美穂さんが血栓症経験者にインタビューしました。これは以外と参考になりました。心筋梗塞のときに胸に何かがぶつかる感じがするそうです。そのあと手足がしびれたそうです。
最後に、辛坊治郎氏の司会で、柔道金メダリストの野村忠宏氏、前述の教授、中井さん、協会副会長のパネルディスカッションがありました。辛坊さんは名司会です。御正明瞭、意味明晰です。上手です。巧みに宣伝にならないように宣伝していました。驚いたのは野村氏はサプリメントで医学博士号をもっているそうです。話聞いていると、プロテインやビタミンの「おたく」ぽいです。サービス精神満点で三つの金メダルを聴衆に見せてくれました。話も上手でした。ちょっと飲んでみたい気もしましたが、どうするかはこれから決めます。
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日本の神社18 鹿島神宮・香取神宮

週刊「日本の神社18 鹿島神宮香取神宮」を読みました。来月の初旬に同神社を40年ぶりに訪れることになり、その予習として読みました。タケノミカヅチ天孫降臨の前に出雲に行ってオオクニヌシを脅かした神です。この有名な神様を祀っているのが鹿島神宮、その兄弟の刀の神様フツヌシを祀っているのが香取神宮です。両社とも戦いの神様を祀っていることになります。もともとは物部氏の守り神だったようですが、後に中臣(藤原)氏の信奉となったようです。本殿が北面しているのは蝦夷に対する防御の意味があるとのことです。平安時代延喜式で神宮の称号を得ているのは伊勢神宮とこの二つの神宮です。
それにしてもディアゴスティー二社のこのシリーズ、実にレベルの低い雑誌です。読みづらい、内容が薄い、碌な人が書いてないと思います。写真も下手、印刷も杜撰、ひどいです!

トップポイント2018年6月号

「トップポイント2018年6月号」を読みました。取り上げている本は以下の10冊です。①遅刻してくれてありがとう、②ブルーオーシャンシフト、③ ダーウィン・エコノミー、④プラットホームの経済学、⑤中国新興企業の正体、⑥OKR、⑦ ハーバード流 心のマネジメント、⑧サイバーエフェクト 子供がネットに壊される、⑨ベーシックインカム入門、⑩国民のための戦争と平和 でした。この中で興味を持って要約全文を読んだのは「遅刻してくれてありがとう」「ダーウィン・エコノミー」「サイバーエフェクト子供がネットに壊される」「国民のための戦争と平和」でした。購入に至った本は「遅刻してくれてありがとう」「国民のための戦争と平和」です。 備忘します。
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「遅刻してくれてありがとう」テクノロジーやグローバリゼーションのあまりに早い進展を前に、多くは多くの人が戸惑っている。いま世界で何が起きているのか、加速する変化にいかに対処すればよいのかを、ピューリツァー賞3度受賞のトーマスフリードマンが語った。自らの世界的ベストセラー「フラット化する世界」後の時代、「加速の時代」の道案内だ。ページ3
ダーウィン・エコノミー」アダムスミスは、自由な市場がすべての人に利益をもたらすとした。だが今日は、彼の言う見えざる手は機能せず、富の格差は広がるばかり。むしろチャールズダーウィンが説いたように、個の利益と集団の利益を対立している。本書はこの自然科学者の視点を経済に応用。自然選択理論を軸に、自由競争の欠点を明らかにする。ページ11
「 サイバー・エフェクト子供がネットに壊される」今日は、3〜4歳の幼児の16パーセントが自分用のタブレット、8〜10歳児の30パーセント超がスマートフォンを持ってるという。こうしたデジタルテクノロジーは、彼らの成長にどんな影響を及ぼすのか。アメリカ人気ドラマ、サイバーの主人公のモデルにもなった心理学者が、最新の研究ふまえ解説。子供を持った親たちに警鐘鳴らす。ページ31
自撮りは、サイバーセルフの最前線に位置するものだ。それは念入りに仕上げられた加工品で、皆に消費してもらうために創造され陳列される。しかし多くの自撮りにおいて、被写体の顔には虚ろな表情が浮かんでいる。目はこちらを見ているが心は別の何処かにあるようだ。自撮りはそれを見るものに一つの問いを投げかける。私の姿を見て、どう思う?ページ34
「国民のための戦争と平和小室直樹氏は言う。第二次世界大戦は平和主義の巻き起こした戦争である。第一次世界大戦後、欧州各国に登場した平和主義者は、かえって平和の基礎星くずし、戦争への道を切り開いた。こうした歴史の矛盾を指摘しつつ、戦争平和について説いた書である。戦争は高度に文明的な制度など、目からウロコの指摘がなされる。ページ39
自撮りは、サイバーセルフの最前線に位置するものだ。それは念入りに仕上げられた加工品で、皆に消費してもらうために創造され陳列される。しかし多くの自撮りにおいて、被写体の顔には虚ろな表情が浮かんでいる。、目はこちらを見ているが心は別の何処かにあるようだ。自撮りはそれを見るものに一つの問いを投げかける。私の姿を見て、どう思う?ページ34