死ぬ瞬間

先週の土曜日の昼、何気なくNHKのBS1にチャンネルを合わせたら、キューブラー・ロスの名前が聞こえました。キューブリックと間違えて「2001年」の話かと興味を向けると、それは「死ぬ瞬間」のエリザベス・キュブラー・ロス博士のことでした。

晩年、死後の世界を信じるようになり、学会からも、家族からも遠ざかった「最後のレッスン」の日々を映像で紹介していました。

キューブラー・ロスは、死と死の瞬間の研究書「死ぬ瞬間」の著者です。精神科医の彼女は、ニューヨークの病院で、「彼らは避けられ、粗末にされ、だれも彼らに正直に接していない」ことを知り、末期の患者の側で、心の声を聴いていました。人は必ず死ぬ、万人に与えられた平等ですが、死が自分の問題として迫ってきた時、納得する迄には勇気と時間が必要です。彼女は、死に至る過程を5段階に順序づけました。


 1 否認 (医師の診断は間違っている。告知への否定)

 2 怒り (何故私が先に死ななければならないかという、運命に対する怒り)

 3 取引き (神に祈る。奇跡への願い)

 4 抑鬱 (鬱状態に陥る)

 5 諦めと別離への準備 (死を受け止める準備。自分への関心から他者への関心に変わる)

1995年に彼女は脳梗塞の発作におそわれ、麻痺が残り、彼女自身死と向き合うこととなりました。容態は安定したとはいえ、完全には回復しませんでした。思いもよらない自らの「終末」に怒り、苦しみ「私は神に、あなたはヒトラーだ、と呼びかけた。でも神は、ただ笑っていた」2001年の夏のインタビューが放映されました。

番組の中でも触れていましたが、彼女がホスピス運動を創始したわけではないが、この運動の根拠を与えたことは間違いありません。

大学生の頃、品川図書館の哲学書のコーナーで「死ぬ瞬間」という題名に惹かれて読みました。いつか自分も死ぬことになる、その準備は今からしなければと子供心に思いました。今再び、人生を十全に生きることとは何か、考え込んでしまいました。

2006年4月29日

死ぬ瞬間―死とその過程について (中公文庫)

死ぬ瞬間―死とその過程について (中公文庫)