もう一つの日本

「もう一つの日本 −失われた心を探して」(皆川豪志・徳光一輝著)を読みました。ブラジル、パラオ、スペイン、ブータン日系人のインタビュー本です。考察が甘いなあ。インタビューの事実内容、旅行記としては参考になりました。昔、日本が日本人を棄てた事実、棄てられた人々の複雑な感情がよくわかりました。ブラジル2世、3世の出稼ぎの現状を知り、誠に申し訳なく思いました。石川達三の「蒼氓」の暗い感じを思い出しました。また中島敦の一連のパラオ小説の明るさも思い出しました。スペインにハポン(日本)姓の人が何百人もいて、支倉常長一行の子孫だと称していることを全く知りませんでした。面白い。

聡明なブータン前国王の「国民総生産量(GNP)より最大幸福量(GNH)を高める国家にする」目標が現在どうなっているかの旅行記として大変興味深く読みました。すくなくとも菅直人の「最小不幸社会」よりは前向きでいいです。備忘します。


…当時の小泉純一郎首相が空から降ってきたのだ。…小泉首相はヘリコプターでの視察の途中、グアタバラ移住地の上空にさしかかった。(カンゲイ 小泉首相)地上の赤土のグラウンドに石灰で白く大垣され、こいのぼりが泳いでいた。百人ほどの移住者の姿を見た首相は、急遽、ヘリを着陸させた。予定外の行動だった。…首相の高級スーツは人々の涙がしみこんだ土で真っ赤になった。(P.48)