ヤクザが店にやってきた

「ヤクザが店にやってきた」(宮本照夫著 新潮文庫)を読みました。大型書店で何気なく見つけた本です。ちょっと「さわり」だけ読もうと思って読み始めたら、2時間、最後までいきました。面白い。著者はクラブやスナック、焼き肉屋など飲食店オーナーで、45年間「暴力団お断り!」を標榜し、実践した信念の人です。神奈川県川崎市の話ですが、体験的に川崎の街は恐い、その恐い街で45年間です。

私は品川の三業地(色町)の生まれで、飲食業の父からヤクザの対処方法を教わりました。簡単です。「ヤクザの居るところに行かない」「喧嘩が強くならない、武道を覚えない」「逃げる」「ヤクザは叩けば埃が出る、毅然としていなさい、恐れることはない」「ヤクザは金で解決できるが、チンピラは恐い、怪我するぞ」等々。そういう土地柄ですから小学校の友人は何人もヤクザになり、私の知っているだけでも3人は死んでいます。気の弱い、貧乏な子たちでした。何年か前に、同窓会で「若山君は新宿の路上で撃たれた」と聞き、「お母さんは優しい人だった、妹はどうしているか」と生前を偲びました。

一つだけ備忘します。


「ヤクザが逮捕されたとしても、お礼参りが怖い…」と警察に相談しない人が多いが、…私の経験から言って、お礼参りなんてものはまずない。あったとしても飛行機事故に遭う確率以下だと思う。…やっと塀の外に出てきたのに、お礼参りなんかしてまた塀の中に戻りたくはない…被害者に「お前のおかげで刑務所に入ったんや」と言っただけで、実刑8ヶ月の例もある。(p.286)

ヤクザが店にやってきた―暴力団と闘う飲食店オーナーの奮闘記 (新潮文庫)

ヤクザが店にやってきた―暴力団と闘う飲食店オーナーの奮闘記 (新潮文庫)