羊の歌

「羊の歌」(加藤周一著)を読みました。名著の誉れが高く、心して読みました。大秀才にして、記憶というものが、脆く、あやういものだと理解しました。振り返って、我が身を思えば、過去の結果としての現在の自分であるのに、その道筋が定かではないこと恥じ入りました。名著です。
著者の疾風怒濤の時代(シュトゥルム ウント ドランク)を追体験しました。論理的で、柔らかく、ときに皮肉で頑固な若者の精神記録でした。一中、一高、東大医学部卒の大秀才ですが、府立一中出ということは私の大先輩にあたります。「選ばれしものここに集う」の校歌や国会議事堂が見える教室風景を久々に思い出しました。2.26事件の頃の若き体育教師(原先生?)に触れていないのが残念でした。官僚を匿ったのをのを自慢していましたのに… 横光利一氏を追い詰めた話、8月15日に世間が一変したことなど、興味尽きない内容でした。彼の小学校時代の事件(校則違反)に私自身の痛恨の事柄を思い出し、深く反省しました。

羊の歌―わが回想 (岩波新書 青版 689)

羊の歌―わが回想 (岩波新書 青版 689)