老いたるスサノオ


芥川龍之介「老いたる素戔鳴尊」を読みました。全文を声を出して読みました。聞き手は妻で、読みながら日本語の心地よさに浸りました。妻は一言「面白かった…」と。あらすじは「古事記」に沿っていますが、娘(須勢理昆売 スセリビメ)を嫁がせる老いた父親の物語に仕上げています。自分より劣った男に嫁がせるわけにはいかない、父としての責任感と嫉妬の入り交じった不思議な感情を巧みに表現しています。ついにスサノオは男(葦原醜男 アシハラシカオ)を認め、「おれはお前たちを祝(ことほ)ぐぞ!」と叫びます。
誘惑者、葦原醜男は、大穴牟遅神(オオナムジノカミ)のことです。後の大国主命オオクニヌシノミコト)です。古事記では兄弟達に追われ、地下世界(根之堅州国)に逃げ込み、スサノオに認められる段です。この後、国をまとめ、国譲りに至ります。この出雲の話は「日本書紀」には記述されていないそうです。