裸になったサラリーマン

「裸になったサラリーマン」を読みました。この本はすでに絶版です。演劇株式会社「ふるさとキャラバン」の取材ノートで、ミュージカル「裸になったサラリーマン」のあらすじと多数のサラリーマンの取材記事が載ってます。自分の原点を知りたくて読み返してみました。
今から20年前、異業種交流会で知り合ったふるさとキャラバンの女性からインタビューを受けました。バブル崩壊でサラリーマンが右往左往していた頃です。当時、私は新事業開発部で新店舗の企画をしてる真っ最中でした。多分、相当興奮状態で話をしたのでしょう、私の話が面白い話として本書で取り上げられました。「伝説をつくらないか」なんとも臭い台詞です。若気の至りの全文を備忘します。

伝説をつくる覚悟で
新規事業部は入社以来のあこがれだった。六年前から異動の希望をだし続けていた。そしてついに三年前に新規事業部への配属が決まった。イトーヨーカ堂が展開したセブンイレブンを再現する意気込みだった。
もちろんそれまでの10年間、営業マンとしてもよくやったと思っている。むしろ優秀すぎて、営業からはずしてもらえないかと思ったほどだ、そのままいけば、学歴、社歴、経験からいって、平部長は間違いなかった。
あこがれの新規事業部、しかし着任してがく然とした。平均年齢54歳、覇気をなくした窓際族が迎えてくれた。体質も平均年齢どおり。
知恵のかぎりをつくした企画書も、タイトルを読んだだけで、「こんなものできないよ」といわれる日々が続いた。華々しいデビューのはずが…。落ち込むばかりだった。
自分には人脈が必要なのではと、社外の交流会にもひんぱんに顔をだした。名刺500枚を集めて満足していた時期もある。
必死にあがいていたときに、リゾートホテル事業の責任者にとの内示があった。目をかけてくれた次長が、「彼しかいない」と推薦してくれたのだった。だが、「イヤです」ときっぱり断った。バブルの絶頂期ならいざしらず、今からでは出遅れである。先発のリゾートホテルも苦戦している。事業としてうまくいくとは、考えられなかった。
しかし、企画が通ってしまうと後戻りできないのが会社組織である。大冒険なのは推薦してくれた次長もわかってのことだった。
「骨はひろってやる」といわれて心が揺れた。20歳以上も年上の上司だったら、そんな慰めには耳を貸さない。だが、次長は7歳違いだ。さらに次長は続けた。
「2人で伝説をつくらないか」
この言葉で、決心がついた。この人を重役にするつもりで、がんばろうと思った。
「やらせてください」と返事をした後で、自分からお願いした。
「一つだけ約束してください。もし失敗しても私をかばわないでください。共倒れになってしまいます。5年くらいたって、ほとぼりがさめたころ、まだ私に見込みがあったら、そのときには骨を拾ってください」と。
今、営業時代に身につけた「仕事を仕掛けるときには、相手が驚くほどの迫力で訴えろ」という信念で、直感と思い込みを信じて突き進んでいる。自分が自信をもって突き進めば、周りも成功する気分になって、前向きになってくれるものである。  流通36歳

その事業は大成功し、結果として売上は当時の20倍になりました。次長は役員になり、私も社長になり、失敗を重ねながら今に至ります。