サムライの子

「サムライの子」を読みました。部下(役員、52歳)が子供の頃に大きな影響を受けた童話だそうです。講談社からの出版で、今は絶版になっています。「サムライ」が差別用語だから絶版なのかもしれません。「サムライ」とは廃品回収業者のことですが、蔑んで使う言葉だそうです。ちなみに「ノブシ」は乞食に近い人を指す差別用語だそうです。1960年が処版ですから、50年以上前の作品です。
主人公ユミの祖母が亡くなり、父のもとへ転居することになりました。その父は戦争で怪我をしてまともに働くことができず、廃品回収業で生計をたてていました。ユミはそのことを知りませんでした。「サムライ」であることを同級生に知られないようにふるまいます。やがて皆が知ることとなりますが、親切な周りの人達に支えられてユミは健気に成長していきます。大きな世間の流れのなかで翻弄される子供の姿を活写しています。

サムライの子 (講談社青い鳥文庫 17-1)

サムライの子 (講談社青い鳥文庫 17-1)


貧しい時代のはなしです。品川の三業地生まれの私にはよくわかります。川べりに掘立小屋がありそこに鉄くずやら紙くずが山積みされていました。小学生の頃は両親からは近くにいかないように言われていました。みんな貧しかったので気にもしていませんでした。臭い子もたくさんいました。さすがにシラミだらけの子はいませんでしたが… 読みながら、あの貧しくて苦しい時代を思い出しました。同時に希望に溢れていたことも思い出しました。良い本です。