「嫌消費」世代の研究

「嫌消費世代の研究」を読みました。衝撃的な書き出しではじまります。「クルマ買うなんてバカじゃないの?」「大型テレビなんていらない。ケータイのワンセグで十分」「日本語が通じない海外旅行なんて楽しめない」このように発言する若者を解説してくれます。備忘します。

「嫌消費」世代の研究――経済を揺るがす「欲しがらない」若者たち

「嫌消費」世代の研究――経済を揺るがす「欲しがらない」若者たち

消費支出減の最大の要因は、階層ではなく世代であると結論づけることのできる。不況期には、雇用や収入環境が悪化して、収入が減少し、将来への不安が増大することによって、消費が低迷する。そして消費低迷は、景気をさらに悪化させることになる。現在の消費低迷はこのような景気循環の面に加え、世代要因が重なっている。(72ページ)
我々の分析によると、消費意識の中で他の世代に比てバブル後世代の支持率が最も高い項目は、「自分の預貯金が増えていくことが単純に嬉しい」である。価値意識ででも見たように、彼らのお金地位や名誉への関心は高く、こだわりは強い。したがってお金が好きなので消費は抑制されることになる。 (152ページ)
この世代は、なぜ、消費しないのか。流行に乗ろうとする…見せびらかし消費の欲望も支出拡大には向かわないのはなぜか。それは、消費欲望が、あまりにも他者依存であるからである。「他人がどう思うか」「他人にどう見せたいか」が先行すると、他人に評価されないものは欲しいとは思わない。また他人の目を気にしすぎて、自らの購入目的が曖昧になり、購入動機が弱くなり買えなくなる。( 160ページ)
バブル後世代の消費者に、売り手はどう対応すればいいのだろうか。この問題に対処するにはするのは、不況への対応より難しいかもしれない。循環的な不況は、他者とも値下げ競争に対応できるコスト競争力を養い、給料の回復を待てば良い。しかし現状のままでは、いくらコスト競争力をつけても、消費者の収入増加を持って待っても、バブル後世代には買ってもらえない。現実的なバブル後世代への対応の選択肢は3つある第一が、バブル後世代をターゲットから外すこと、 バブル後世代からの撤退である。第2には、バブル後世代にアプローチし、ニーズを深堀りし、商品サービスや売り上げをを工夫することによって攻略することである。…第3はバブル後世代の動向やライバル車の動きを注意深く見守り、…他社に先手を打たれて打撃を受けるリスクよりも、他社に先駆けて失敗するリスクを避ける手である。…(164ページ)
ここで改めてバブル後世代の間消費を再理解する必要がある。これまではバブル後世代を収入があるにもかかわらずなかなか消費しないものととらえてきた。しかし個別の品目で見ると彼らの消費意欲は低いわけでは無い。衣食住などの分野への関心に見られるように、日常性、必需性、ローリスク性、を持った商品品目への欲求は強い。しかし、自動車家電と海外旅行に象徴される特定の品目への関心は低い。したがってバブル後世代の嫌消費は、特定の品目の態度であり、それらの品目は、従来耐久財など支出は割合の大きかった者が多く、結果として、平均消費性向などの消費水準が低くなっていると再理解できる。問題は、特定品目への関心が低さと購入の少なさなのである。他方で、衣食住の3種の神器の商品カテゴリーでは大きなチャンスが生まれている。(180ページ)
バブル後世代が減少に陥っている理由は収入見通しの悪さ、将来が雇用などの強い不安感、他者依存の消費意識である。したがって将来不安を取り除くために、日本経済の長期ビジョンが提示され、雇用機会や条件の改善などの様々なセーフティーネットが準備される必要がある。 (196ページ)