商売の原点

「商売の原点」を読みました。セブンイレブン鈴木イズムはすごいの一言です。商売の原理原則を曲げない強さがあり、競合に負けない熱意にあふれています。競合で売上が落ちるのは力のぶつかり合いの結果ではなく、自滅だと説いています。まさにその通りだと思います、ほとんどの場合は「言訳」でしょう。原理原則に無理がなく、しなやかで強い感じがします。この本は、毎月の現場管理職に語った訓示をまとめたものだそうですが、チームメンバーを励ます言葉に満ちている名著だと思います。備忘します。

鈴木敏文 商売の原点 (講談社+α文庫)

鈴木敏文 商売の原点 (講談社+α文庫)

品揃え、鮮度管理。クリンリネス(清潔)、フレンドリーサービスが、私どもの商売における基本四原則です。(19ページ)
競争が激しくなったから売り上げが上がらないというのは全くナンセンスな考え方です。今まで自分たちのやってきた路線の中だけでやろうとするから、そうなるのです。マンネリ化すれば、当然、お客様は飽きてしまいます。そこでお客様を飽きさせないための工夫が必要になります。(39ページ)
お客様に飽きられてるということが認識できたら、モデルチェンジを図るか、また別の商品を用意するほかありません。要はお客様のニーズをもっと掘り起こすなければならないということです。(41ページ)
小売業の場合、特別に難しい仕事をしてるわけではありません。商品をきちんと並る。伝票一枚一枚きちんとつける。これらは何も難しいことではなく、やり方を覚えれば、誰にでも簡単に出来る事です。難しいのは、その基本を確実に実行することです。(44ページ)
コンビニエンスストアにおいては味の問題はとても大事です。例えば、弁当がまずかったら、価格の問題ではありません。どんなに安くても、かってはもらえなくなるでしょう。(55ページ)
私から見れば競合が増えるとなぜ売り上げ下がるのか、不思議でなりません。売上が下がるのは、競合のせいではなく、お客様から見て、その店の価値を比較できるものさしができた結果にすぎないのです。この場合一番問題なのは品揃えにあり、それに加えてフレンドリーサービスとクリンリネスです。競争相手が出てきたときに響いてくるのが、この問題です。(58ページ)
よく競合によって売上が半分になってしまったといった話を耳にしますが、その真相は、こういうことではないでしょうか。競合がないときには、基本的なことに手抜きをしていた。そこに比較できる対象が出現したため、そこが余計に際だってしまって売り上げを大きく下げる要因になった。そこを力と力がぶつかりあった競争の結果だと錯覚しているにすぎないのです。(59ページ)
これと同じでただ売れ筋をどんどん投入していけばいいというものでありません。まずしに筋商品を除くことが肝心で、そのためには単品管理と言う基本をこまめに実践していくほかないのです。(68ページ)
そうすると温度と湿度の関係で売れる商品というものも変わってくるはずです。このことは仮説検証を実行してれば経験情報として身に付いているはずです。しかし普段の仮説検証がしっかりできていないとこのような発想が湧いてきません。(87ページ)
日本人は鮮度に対して敏感なので買いだめして自宅の冷蔵庫で保管しておくという人は非常に少ない。この買いだめしないという性向が強いからこそ、品切れや機会損失を起こさないように、精度の高い発注をしていけなければならないのです。(88ページ)
破棄が多いという事は機会損失が多いということです。機会損失も破棄ロスも、単品管理がしっかりできていないことに起因しています。それはとりもなおさず、お客様の立場に立って物事を見ていないことに由来します。(102ページ)
売り手市場の時代にあっては、原価の積み上げで売価を決めるのが常識でした。しかし、今の買い手市場の時代には、原価がどうであれ、お客様が適正と認知する価格でなければ、お客様は買ってくれません。(113ページ)
マーチャンダイジングとは、一般に商品政策のことを言いますが、具体的には、商品の品ぞろえのことです。それに大きく分けて、食品の場合で言えば味、鮮度、価格の三つの要素から成り立っています。(133ページ)
私はいつも「バッドニュース・イズ・ファースト」ということを言っていますが、これは、いい報告は後回しで良い、会社にとって問題あることが起こったら、まず私までその報告が上がってこなくては困るという意味です。(144ページ)
新しくできた競合店にお客を取られるというのは、競合店ができる前からそういうところだったからに他ならないのです。競争相手がいなかったから、お客様が我慢していたに過ぎないんです。(152ページ)
命にかかわる問題は確率で考えるべきではありません。油断、つまり物事に対して慣れっこになっているのはとても危険な状態です。どんな場合にも、常に神経をぴんと張り詰めた状態であたらなければなりません。それは、商売で儲けさせて頂いている私たちの義務なのです。(185ページ)
会社組織でも部下に対しマニュアル化した教育の必要性を説く上司は、大抵その手の人たち。教育マニュアルやその手のビデオを作って、表面的な教育にばかり力を入れてる会社は、状況が厳しくなってくると、たちまち傾いてきます。経営陣がどうしていいかわからないから、テクニックだけを持ち込もうとするわけですが、これでは会社の土台を強固にすることができません。(208ページ)
本当の意味で人を動かす、つまり、相手の自発性を引き出すことができるのは、自分の仕事に対して熱意を持って取り組んでいる時だけです。熱意を持っている人は、自分にわからないことがあっても、人の協力を得ながらこれを解決しようとするはずです。能力があるかないかの問題ではなく、そういう熱意があるかどうかです。(212ページ)
熱意というのはただがむしゃらにやるということでありません。単に長い時間、仕事を続けているということでもない。むしろ、休日まで働かなければならないという事は恥ずかしいことだと思うべきです。(217ページ)
これほど情報の共有化が必要な時に、ストアマネージャーが自分の店に方針を徹底させることができなくては、その資格がないとみなされても仕方がないでしょう。(230ページ)
いくら会議をしても解決策などは出てきません。もし会議で解決策が出てくるなら、仕事をしないで、朝から晩まで会議をしてもいいわけです。…何かにつけ頻繁に会議ばかりをしている会社、部門は、その会社や部門のリーダーの力の無さを証明してるのと同じです。(238ページ)