巨像も踊る

「巨像も踊る」を読みました。原題「Who Says Elephants Can’t Dance?」の方が面白いなあ。崖っぷちのIBMを1993年から約10年間引き受け、見事に復活させた名経営者ルイス・ガースナーの成功譚です。率直で好感がもてました。備忘します。

巨象も踊る

巨象も踊る

…それまでに様々な対策は講じたと思っていたがいくつかの大きな決断をし、それを公表すべき時期であるのは明らかだった。顧客や社員、業界との対話を終え週末にそして、機中で考えた末、四つの重要な決断を下す準備ができていた。・全体として保持し分割しない。 ・IBMの基本的な経済モデルを変える。 ・ビジネスのやり方を再構築する。 …生産性の低い資産を売却して資金を確保する。頭の中ではこれ以外の戦略も考えていたが九十三年夏の間はその発表を見送ることにした。(85ページ)
「ここで今回の発表の背景について説明したい。…皆さんに申し上げたいのは、今現在のIBMに最も必要ないもの、それがビジョンだということだ。」記者たちのまばたきの音が聞こえてきそうな雰囲気だった。(99ページ)
今最優先すべきは収益性の回復だ。会社の部署を掲げるのであれば、その最初の項目は、利益を出して収益性を回復することにすべきだ。(100ページ)
在任中に成し遂げたことで、最も誇らしく思う点を一つだけ上げよと言われれば、こう答える。引退にあたって、後継者にIBMの生え抜きを起用し、主要な事業部門の責任者もすべてIBMの生え抜きにしたときことだと。(106ページ)
とは言え決断で最も難しかったのは、技術面でも財務面でもない。それは企業文化の改革だった。文句のない成功をおさめてきたが、その結果、何十年もの間、通常の競争や経済的要因とは無縁の企業でその後何十万人の人々の考え方や本能を変えねばならなかった。社員が現実世界の中で生き、競争し活用しなければならない。これは檻の中で育ったライオンを、ジャングルの中でも生きていけるようにしつけるようなものだ。こうした痛みが伴う企業文化の改革は、上からの号令でできる訳では無い。私の力ではスイッチを入れることも報道を変えることもできなかった。企業文化の改革は、どの線から見ても、IBMの変革の中で最も難しい部分だった。そして、当初できるはずがないと思っていた。(237ページ)
…問題は、権限集中か権限分散ではない。偉大な組織は、各部門が共有する活動と分散型との間でうまくバランスを取っている。(322ページ)
大組織について学んだことの中で最も驚いた、そして気分が滅入る点は組織内の各部門が足を引っ張りあい、競争し合う姿勢をとることである。これは例外でも異常でもない。どこでも見られる現象だ。会社にあるし、大学にあるし、政府にももちろんある。…自分たちの特権、自分たちの自治、自分たちの縄張りを必死になって守ろうとする。(327)ページ)