日本人へ 危機からの脱出篇

「日本人へ 危機からの脱出篇」を読みました。昨年、NHKの百年インタビューで塩野七生氏の姿や話しぶりを、はじめ知りました。怖いおばさんとういうのが第一印象でしたが、話を聞いているうちに納得する部分が多く、思わず録画ボタンを押していました。30年前「チェザーレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷」をドキドキワクワクして読み終えたました。「まるで信長だ!」と思いました。文庫版「マキャベリ語録」は今でも私の愛読書です。「天国に行くには地獄への道を知らねばならない」
さて、本書は文春の名コラムです。読み始めて、辛口で小気味よい内容と適度な長さで本当に気持ちよく通読できました。意見の内容が自分とは合わなくても、実に楽しく読みました。皮肉がきいているのと、虚を突かれて、思わずニヤリという本です。良書です。備忘します。★★★

…自信をもつには人生という戦場で勝つしかないのだが、いまだ経験右側で自力もない若者の考えることは、初戦にはなるべく弱い相手をみつけることしかない。…だから若い人にたちにも、簡単にシラケないで悪あがきしてほしい。マキャベリの次の一句を贈ります。「やらないで後悔するよりも、やって後悔するほうがずっとよい」(p.39)
楽天ユニクロという…会社が、日本の中でも社内では英語オンリーと決めたと知ったときは、ご冗談でしょうと一笑に付したものだった。…この二社の社長殿には、…この決定を外国の同僚たちの前で話すことを勧めたい。…たとえ、失笑の渦に包まれてではあっても。(p..50)
…日本人の残酷さに直面して愕然としている。世にいう「風評被害」である。…まるで今の日本は、「抗議」と「不安」だけが肩で風切っているようだ。それをささえているのが、自分の考えることだけが正義であるという思い込み。この種の思い込みくらい、互いに力を合わせないと機能していかない住民共同体にとっての害悪はない。(p.122)
…「食」でもなく、「カネ」でもなく、人間がほんとうに求めているのは「職」なのである。なぜなら人間は、仕事をして得た報酬こそが自分の力で稼いだカネであることを感じており、それをつづけることによってこそ、自分自身の人間としての尊厳を確かなものにしていくことができると知っているからである。…生活保護では、最終的な解決には至らない。(p.222)