人生後半のための知的生きがい入門

「人生後半のための知的生きがい入門」を読みました。本棚に10年近く置いてありました。晩年(定年後)の心得、心構えを説いた本です。ついに、このような本を読む年齢になったということです。それにしても、あのままだったら、ルールに従って62歳で社長を引退したあと、生きがいを失い、過去の成功と悔恨だけを語り、誰からも相手にされない最晩年を迎えるはずでした。考える時間を与えられた僥倖に感謝しています。人生後半は「衰えを自覚したら去る」ことだけは忘れないで「楽しいことを、ひとのため、全力で」行いたいと思っています。備忘します。★★

人生後半のための知的生きがい入門 (PHP文庫)

人生後半のための知的生きがい入門 (PHP文庫)

私がコラムなりエッセーなりを書くときには、まず手続きとして一般に考えられたり言われたりしている点を箇条書きにすることから始める。普通、五つか六つの平均的な意見が並ぶはずだ。が、それは売り物にはならない。つまり、そういう紋切型の意見は発表するまでもないもので、俗な言葉で言えば、商品価値に乏しい。したがって、勝負は出尽くした五つ六つの外に、七番目か八番目の新しい見方で行うことになる。(p.29)
…「四時の序、功を成すものは去る」ということ。秋が去って冬が来れば、古いものは散って消えていく。政治家でも実業家でも、いつまでも地位に恋々としているのは老醜というものだ。衰えが見えたら、さっさと身を引くいさぎよさ、ひょっとしたら、これが最高のお洒落かもしれない。(p.44)
…生きがいは「生活をいとなんでいく上の実利実益と関係ない」「させられているのではなく、やりたいからやる」「個性的なものである」「ひとがそのなかでのびのびと生きていけるような、そのひと独自の心の世界をつくる」といった特色をもっている。(p.92)
出征する弟とふたりで田舎の叔母に暇乞いに行ったとき、叔母が弟に「おまえ、決死隊は前に出ろ、と言われて、はい、なんて、まっ先にでるのではないど」と申しました。(p.153)
…忠良な臣民が、帰属する組織に忠誠を尽くす市民に変わってはいるけれど、個人主義を見失って、ただ馬車馬のように働くことだけは同じなのだ…そして、親方日の丸で定年を迎えて、ある人は、途方に暮れることにもなる。雨の日のための用意は、中国人や韓国人に比べて日本人は非常に稚拙に思えてくる。(p.168)
私たちは、めいめい自分史を持っているし、自分史を書く力を持っている。ただ、自分史は老いのくりごとになってはいけない。…・きわめて自己中心的になる。 ・昔のことに饒舌になる。 ・過去を悔やむ。 ・過去の苦労話をする。 ・つまらぬものを集める。…以上が自分史につきまとう。それを承知で、めいめいが自分にしかできない記録を残しておくべきだ。(p.189)
…徒党の一員が「皆」から離れたとき、心理的にも、肉体的にも急に衰えて、老け込んでしまうことだ。定年で会社や官庁から離れた人たちの老化のスピードの速さを見ると…徒党に属する人の弱さを痛感する。人は、集団にとらわれない自分の世界を確乎として守り、生きがいを見つけるべきではないか。(p.202)