もの食う人びと

「もの食う人びと」を読みました。ルポルタージュです。「食う」を媒介にして現在(1993年)の世界を提示しています。世界最大の5000席におよぶレストランがタイにあり、その食事風景は圧巻だとのことです。「数千の口と胃袋に詰まっているのは思想でも主張でもなく、ただ食いものばかりなり。ああ、人とはあなたも私も、もの食う器官なのだなあ、と感に堪えなくなるのである。(p.64)」
1946年から1947年にかけて、ミンダナオ島のある村の周辺で38人が残留日本兵に殺され、その多くが食べられたそうです。その食べた過去に苦しむ人、間違えて食べてしまった人の顛末に驚きました。
読了して「食う」という行為に注意を払ってこなかった自分に気づき、なぜか恥じ入ってしまいました。その他にもマニラで人魚(ジュゴン)を食う話、東欧での石炭掘りのスープ、旧ユーゴスラビアのイワシ、ソマリアのチャット(麻薬性の植物)、チェルノブイリボルシチ、択捉のラブーフ(ふき)などなど。一読に値します。良書です。★★★

もの食う人びと (角川文庫)

もの食う人びと (角川文庫)