パリ・ロンドン放浪記

「パリ・ロンドン放浪記」を読みました。労働は暇つぶしかもしれない。「動物農場」「1984年」のジョージ・オーウェル著作です。若いころの貧乏生活ルポルタージュです。すさまじい空腹と、劣悪な寝所、失業者の哀れ、むき出しの人間の姿を描いています。名作の萌芽は、すでにこの本によく現れています。備忘します。★

パリ・ロンドン放浪記 (岩波文庫)

パリ・ロンドン放浪記 (岩波文庫)

無益な仕事を永続的にしようとするこの本能の根本には、要するに、大衆にたいする恐怖心があるのではなかろうか。低級な動物だから、暇をあたえるのは危険である。だから忙しく働かせる方が安全なのだ。…貧乏が辛いことは承知している。…しかし、生活条件の改善には反対だね。諸君は今のままの方がずっと安全だといういう気がするから。(p.160)
…失業者の心配は給料がなくなることだと思うのはまちがいで、むしろ、働く癖が骨の髄までしみこんでいる無学な人間には、金よりも仕事の方が大切なのである。教養のある人間は仕事がなくなっても辛抱できる。…本当にあわれなのは…暇つぶしの才覚もないまま貧乏と向かい合わなければならない人間なのである。(p.241)