働くことを問い直す

「働くことを問い直す」を読みました。労使関係の本です。フォード生産システムであれば仕事を細分化するので、経営にとって組合の協力は必須ではないが、デミングの生産システムを取り入れた日本では、労働者同士の密な連携が必要で、組合の協力が必須でした。日本の組合は経営に協力することにより発言権を確保してきました。終身雇用、年功序列、年金、健康保険、充実した社会保障は企業に協力した見返りでもありました。 その後、経済はグローバル化し、日本企業は世界へ。そしてホンダは米国進出の際、組合の協力なしに事業に成功しました。労使関係が微妙に変化し、今の厳しい若者達の仕事環境に至りました。良書です。備忘します。★★

「働くこと」を問い直す (岩波新書)

「働くこと」を問い直す (岩波新書)

…日本の労働組合職業訓練にはほとんど関与してこなかった。その結果、どのくらい能力がのびれば、どの程度、賃金があがるかということが、経営側だけに主導されることになってしまい、曖昧にされてきた。(p.36)
…企業活動の目的とはなんだんだろうか。それは、究極的には企業活動を継続することであった。…ただひたすらに企業活動を継続させるための策をつくすことこそが、専門的経営者の役割である。(p.59)
…デミングが、効率的な経営のしくみ「統計的品質管理手法」を…日本に伝えたことだった。これは、さまざまな工程に品質管理のフィードバックのしかけを組み込むことで企業全体の効率を高める方法のことだ。(p.71)
もはや、働かせ方でみれば、欧米だからジョブ型、日本だからメンバーシップ型という紋きり型では語れない。…進行しているのは、人数を絞り込んだ中核的な従業員によるメンバーシップ型の働かせ方への移行と、低賃金で単純作業を行うジョブ型の働き方をする労働者への置き換えだ。(p.131)
そもそも欧米諸国には定年は無いか、廃止する方向に向かっている。年齢による差別を認めないのがその理由だ。そういう国々では、同じ仕事をしていて賃金が下がることは、パフォーマンスが大きく低下したことを除けば、ほとんどありえない。(p.165)
働いている人にとっての職場は、仕事の場所ということ以上の意味を持っている。それは、仲間と仕事をして、たわいもない話をし、昼食をとり、仕事帰りに酒を酌み交わし。休みにどこかの出掛けるといったことを繰り返すなかでつくりあげられていく「拠り所」だ。(p.168)
ここでもっとも重要なことは、労働組合が労働者の職業能力の育成に関与するということである。(p.181)