孫子を読む

不敗の法則「孫子の兵法」、戦に勝つ方法を詳細に論じています。「彼を知り己を知れば、百戦してあやうからず」。孫子の基本は老子にあり、道(タオ)に因っていることを知りました。まず「道・天・地・将・法」によって戦の可否を定めること。次に「形」と「勢」を観ること。最後に「虚」を使うこと。韓非子にも曹操にも大きな影響を与えています。武田信玄の「風林火山」は孫子の言葉です。「その疾きこと風の如く、その徐かなること林の如く、侵掠すること火の如く、知りがたきこと陰の如く、動かざること山の如く、動くこと雷霆の如し。郷を掠むるには衆を分かち、地を廓(ひろ)むるには利を分かち、権を懸けて動く。迂直の計を先知する者は勝つ」。 備忘します。

孫子を読む (1983年)

孫子を読む (1983年)

司馬遷の孫氏伝、この故事の第一義的な要点は、「将は軍にあっては、君命に受け取るざる所あり」という将軍と軍に対する孫武の認識と、「王様は兵法の言葉がお好きなだけで、その中身をお用いにはなりません」という評にあろう。ページ17
兵は詭道なり(戦は当座の便法である)という言葉でいいあらわした。これは、戦争は政治の一手段である 、とする近代の戦争観と軌を一にしている。将軍が担当するのは詭道の範囲に限るのであって、政治の本道にはわたらない、そう限定することによって、孫武は、将軍の職分を確立し、職分を確立することによって、将軍の権限の自主性と独立性とを獲得したのだ。…戦、それ自体だけを問題とする。となると、戦争は勝つための行動でしかない。「兵は勝つを尊ぶ」孫武にとって、戦とはただ勝つ、ためにのみ存在する。それが孫武の戦争観だった。したがって孫子という兵書は勝利を目指して構築されている。そして、それは、ほとんど、勝利という形象を創造して、芸術の域に迫ってるといえようか。ページ41
…兵法は勝つためにのみ存在する。その勝利を、偶然から必然に転嫁することは兵法の機能である。偶然という言葉は法則の不在あるいは法則の未発見を意味する。とすれば、勝利を偶然から必然に転嫁する、ということは、勝利の法則を追求することだ、と言えよう。ページ62
…「形」-態勢という静的なエネルギーを、「勢」という動的なエネルギーに効率良く転嫁するのが、実践の場合の勝利の根本であるが、孫武は、さらに、必勝を期するには、なお虚実ということを心得ていなければならない、という。ページ85
軍令を定めて、その軍令通り、信賞必罰の方法取り、兵の心を利で誘い、害をこ恐れさせて服従へ誘う、というわけである。後世の法家-法治主義者たちが金科玉条にしたやり方である。がこれには、兵卒が、将軍に親しみを覚えるようになっている、という条件が付いている。ページ145