トヨタ生産方式の逆襲

「モノづくりの最大のポイントは、顧客の要求に素早く対応し、欠品や在庫過多を引き起こさないことです。生産量と販売量にギャップを生じさせないモノづくりができるか否かが企業存亡の鍵なのです。ページ116」
私の工場経営の考え方に間違いがあることを発見しました。例えば、大ロットの方が儲かると単純に考えていたこと、リードタイムを生産側から考えていたこと、などなど。非常に勉強になりました。備忘します。

トヨタ生産方式の逆襲 (文春新書)

トヨタ生産方式の逆襲 (文春新書)

一つの工程だけではなく、複数の工程を担当するとなると、工程によって仕事の仕方が変わるので、それに対応できるように作業者は訓練を受けねばなりません。複数の作業工程がこなせるようになると、何らかの事情で1つの工程で仕事がなくなっても別の工程の仕事ができるので、作業者の雇用の変化にもつながっていくわけです。多くの工程を担当できる人は現場では重宝がられます。多能工とは熟練工になるための入り口でもありました。ページ27
まず1番目のポイントは品切れを起こす「欠品」と、売れないものが山積みされる「在庫過多」は実は原因が同じだということです。ページ31
「ストア」とは、部品であり製品なりをあるルールに基づいて保管する場所のことです。私は本来のトヨタ生産方式に則って、次の5つの条件を兼ね備えているものを「ストア」とよんでいます。1.作業に不慣れな人でもすぐに取り出せるように、いつも同じものを同じ場所に置いてあること。2.モノにも場所にも何が置かれているのか明瞭な表示があること。3.必死になって探さなくてもいいように分類されて置かれていること。4.新しく届いたものから置いておいた順番に次の工程に引き取られる、先入先出ができる構造になっていること。5.看板をつけることなど欠品しにくい構造が組み込まれていくこと。ページ34
…当たる需要予測を作ることができる会社など、見たことがありません。正確な需要予測を作成することは現実的には不可能だと思います。…それよりもむしろ来た注文に対していかに敏感に反応できるか、素早いレスポンスの方が断然重要です。ページ41
…顧客を困らせないためには、どうすれば良いのでしょうか? 実は、売れるものは在庫を持てばよいのです。…顧客のためには適正在庫を持つべきです。自分たちの能力に応じたで少なめの在庫全品番持っておけば注文対応が可能になります。ページ42
…人件費が安い外注を使った結果、賃金が高い親会社の経理部や購買部のホワイトカラーが増えることは、正しいコスト削減ではありません。ページ45
納期回答の正体とは、顧客に届けるまでに必要な時間を宣言することです。ですから、短時間が長時間かの違いこそあれ、納期回答しても顧客を持たせることには変わりはないわけです。ページ49
コモディティー化した製品こそ、レスポンスで商売をすることが他社との差別化につながり、収益を満たすことができる、と私は考えています。コモディティー化の時こそ逆にチャンス、最大の商機であると言っても過言ではありません。ページ61
…良い新製品が開発できただけでは、何も改善されません。納期遅れを起こして顧客に迷惑をかけたり、営業が下手な売り方をして値引きさせられたりと、確実に収益に結びつけることができる会社は現実的には多くありません。ページ63
…ものが売れる要素の1つが「タイミング」であるということです。さらに言えば、在庫を持つことが全て悪なのではなくて売れるものを「タイミング」よく出したいのであれば、在庫は絶対に持つべきなのです。ページ71
お客が求める納期に即座に対応できる能力。それは価格競争力よりも武器になるのですページ80
要素1 ものを作るためには、材料や部品が必要です。要素2 材料の加工組み立てをするためには、生産能力が必要です。要素3 最後に「作る気」も要ります。これが意外と重要なのです。ページ82
…極論すれば、売れた分だけ発注していくという考え方です。大ロットで生産すれば効率が向上すると考えること自体が間違いのです。ページ93
非常に単純化して言えば、この「段取り替え」とは顧客のニーズにきめ細かく対応するために、生産や物流の現場も臨機応変に対応する、ということです。ページ99
これまで何度も指摘しましたが、ものづくりの最大のポイントは、顧客の要求に素早く対応し、欠品や在庫過多を引き起こさないことです。生産量と販売量にギャップを生じさせないものづくりができるか否かが企業存亡の鍵なのです。ページ116
この品番という存在が、企業の見えざるコストを増大させるものです。…私の経験上、どんな製品や部品でも1品番増えると、管理コストが年間30万から50万円は上昇します。ページ152
工場が顧客に対して何らかの提案しようと思っても、よく営業は工場に向かって「お客様そんなことを望んでいない」と一喝して聞く耳を持たないことがあります。逆に顧客側から工場に相談したいことがあっても、営業はろくに確認もせず、「うちの工場は一切対応出来ません」「社内ルールによって無理です」と断る場合もあります。ページ136
購買部門が電離層化するときの代表的な言い訳として、「材料を小分けして小ロットで買うと高くなる」というフレーズがあります。しかし本当に小ロットで買うと高くなるのでしょうか?ページ168
一般的には、納期と言えば、、「点の納期」で考えられがちですが、実際のビジネス現場では「エンドの納期」の方が多いのです。そして、この2つの納期の概念をきっちり区別して考えるべきです。なぜならば、この納期の考え方の違いによって、生産、出荷のやり方が全く変わってくるケースもあるからです。ページ200
リードタイムとは「材料発注して、それを使って完成品を組み立てて逆に納入するまでの時間」と考えている人が産業界には多いように感じますが、私は違うと思っています。私達自身、実生活での経験上から考えても、リードタイムとは「顧客が注文してから製品が届くまでの時間」のことを指すのではないでしょうか。ページ216