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野中広務 差別と権力

野中広務氏は、かつて闇総理と云われ、加藤の乱を潰した旧主派のボスと目されていました。でも私は嫌いではありませんでした。率直で頑固で、そしてコワモテで。苦労人で差別をエネルギーに換えた稀有の人だと諒解しました。また政治家は「選挙が全て」と再認識しました。備忘します。

野中広務 差別と権力 (講談社文庫)

野中広務 差別と権力 (講談社文庫)

…野中は、元郵政省幹部が的確に指摘したように「潮目を見る」政治家であって、「潮目を作り出す」政治家ではない。利害や思想の異なる集団同士の調停では突出した能力を発揮するが、かつての田中角栄のように大きなスケールで国家の将来像を創出する力はない。野中が世界の出世階段を駆けあがったのは、その時々の政治状況にすばやく反応し、周囲が求めるパイプ役や裏の掃除役を完璧にこなしてきたからである。そこには一貫して政治思想やイデオロギーは見られない。融通無碍に変化する彼の政治行動に通底する思想を読み取ろうとしてもほとんど徒労に終わってしまう。だが半世紀にわたる彼の政治人生で全く変わらなかった思いもある。差別を乗り越えるには、他人に頼らず自力で道を開く切り開くしかないという確信と、差別の再生産につながりかねない行為への激しい憎悪である。それは彼と部落解放同盟との関係の変遷をたどっていくと、さらにはっきり浮かび上がってくる。ページ321
「麻生総務会長、あなたは…部落出身者を日本の総理にはできないわなぁ、とおっしゃった。…君のような人間がわが党の政策をやり、これから大臣ポストについていく。こんなことで人権啓発なんてできようはずがないんだ。私は絶対に許さん!」 野中の激しい言葉に総務会の空気が凍りついた。麻生は何も答えず、顔を真っ赤にしてうつむいたままだった。ページ352