リベラルがうさんくさいのには理由がある

「リベラルがうさんくさいのには理由がある」を読みました。最近、著者の橘玲さんに傾倒しています。リベラルは昔、輝いていました。選挙の時も保守自民党に大勝させないように投票していました。私が何故リベラルを嫌いになったのか、きっと年をとったからだと思っていました。そうではないことがいく分かりました。リベラルは自分の間違いを認めることができず、空中分解したことがよく分かりました。備忘します。

「リベラル」がうさんくさいのには理由がある

「リベラル」がうさんくさいのには理由がある

 

赤松元大尉や梅澤元少佐が自決を命令したという確実な証拠がない以上、「沖縄ノート」の執筆当時はともかく、現在の「人権水準」では、数百人もの一般人を死に追いやったとして彼ら個人を断罪することが許されないのは当然です。「沖縄「集団自決」裁判」は「日本の右傾化」の象徴でも、保守派・右翼による「歴史の否定」でもなく、自らの無謬性にこだわり、歴史を直視することを怠った「リべラル」の自業自得なのです。ページ73
いつ裏切られるかわからない相手とのつき合い方は、ゲーム理論でもっとも研究されてきたテーマです。…この競技を制したのは、全プログラムのなかでもっとも短い「しつぺ返し戦略」と名づけられた単純な規則だつたのです。しつべ返し戦略は、次のふたつの規則から成り立っています。
①最初は協力する
②それ以降は、相手が前の回にとった行動を選択する
しつぺ返し戦略では、とりあえずどんな相手でも最初は信頼します。これにこたえて相手が協力すれば信頼関係を続け、相手が裏切れば自分も裏切りまず。いちど裏切った相手が反省して協力を申し出ればふたたび相手を信頼して協力関係に戻るのです。ページ84
つくずく残念なのは、一人の詐話師によって慰安婦をめぐる議論が大きく歪められ、それを韓国のナショナリズム反日の道具として利用したことです。保守派のメデイアは92年には証言を虚偽と報じてしたのですから、朝日新聞がらっと早く記事を取り消していれば状況はずいぶん変わったでしよう。ページ96
戦争のほんとうの恐ろしきは、「無辜の民」が犠牲になること以上に、ごくふつうの市民が平然と。隣人ガを殺すようになることです。このグロテスクな「加害」のリアリズムから目をそらせ、「被害」の側からのみ歴史を語るなら、どの国であれ、悲劇をふたたび招きよせることになるでしよう。ページ106
野生のチンパンジーを観察した動物行動学者は、彼らが集団で弱い群れを襲うことを発見しました。チンパンジーの攻撃ではオスを皆殺しにしてその肉を食べ、メスの抱いていた赤ん坊を食い殺してから性交を行ないます。授乳中は生理が止まって妊娠でぎないからです。赤ん坊殺しは自らの遺伝子を後世に伝える、進化論的に合理的な行動です。…私たちは「自分の感情に正直であるべきだ」と思っています。しかし人種差別や性差別をいまだに克服できないように、進化論で生まれたプログラムの中には現代社会にとってきわめて不適切なものがあります。…「政治」のもっとも重要な役割は、ヒトの進化論的な歪みを矯正し、差別や暴力を抑制することです。それに比べれぱ景気がいいとか悪いとかはどうだっていい話ですが、残念なことにこの優光順位はしばしば逆転してしまうのです。ページ127
経済学者の研究によれば、男女格差の要因として「週的時間以上働いているか」を加えると、日本企業の行動をきわめてうまく説明できます。さらに女性が長時間労働した場合、昇進率が大きく伸びることもわかっています。日本の会社は性差別というよりも、労働時間によって管理職への登用を決めているのです。ページ145
麻薬を合法化すれば地下組織は壊滅し、刑務所に収監される犯罪者の数も激減し、高価な麻薬を入手するための衝動的な犯罪も減るでしょう。麻薬供給国の治安は劇的に改善し、アフガニスタンのクリパーンのようなテロ組織がケシを資金源にすることもできなくなります。麻薬依存症はアルコール依存症などと同じく、犯罪ではなく治療の必要な病気として扱われるぺきです。ページ195
日本では自殺の半数は首吊りで、電車に飛び込んだり、練炭自殺するひともあとを絶ちません。コーロヅパでは、「いつどのように死ぬかは自分で決める」というのが当たり前になってきています。同じ人生き生きてきたのに、なぜ日本ではむごたらしい死に方しかできないのか。それを考えるのが本当の「終活」だと思うのですが、残念なことに日本では、「死の自己決定権」というやっかいな問題から目を背け、相続や葬儀、戒名など、死んだあとの、どうでもいいことばかりが熱心に議論されているのです。ページ206
アメリカ社会における最大のタブーは、黒人の失業率が高かったり、貧困層が多いのは、「はたして人種差別が原因なのか」というものです。なぜなら同じエスニックグループでも、アジア系は会的・経済的に大きな成功を収めているからです。ページ218
井上氏は、リべラリズムは近代主義の思想で、その歴史的起源は「啓蒙」と「寛容」にあるといいます。「啓蒙」は、理性によって因習や迷信を打破し、その抑圧から人間を解放する思想運動、、「寛容」は、宗教改革で始まったカトリックピューリタンの血なまぐさい戦争を終わらせるための共存の技術で、これを両輪としてりべラリズムは「正義の思想」を成熟させてきました。しかし、いまやリべラリズムは啓蒙を捨て、寛容だけを強調するようになったと井上氏は嘆きます。ページ232
この正義の基準(正義概念の規範的実質)は、「反転可能性」「だだ乗りの禁止」「二重基準の禁止」です。「反転可能性」は、、自分が受け入れないことを相手に課してはならないというルールです。相手に要求できるのは、自分と相手の立場を反転させて、それでも許容できることだけです。「ただ乗り(フリーライド)の禁止」は、コストを払わずに利益だけを得るのは不正だということです。「二重基準の禁止」は、ダブルスタンダードを使ったご都合主義を許さないことです。ページ234
だったら憲法9条をどうすればいいのでしょう。井上氏は端的に「削除すべきだ」といいます。なぜなら安全保障の問題は、一時の政権が憲法改正によって将来世代に永続的に押しつけるのではなく、通常の政策として、民主的プロセスのなかで議論されるべきだからです。ページ240
①労働者を「正規」と非正規」に分け、同じ仕事をしているのに異なる待遇に一のぼ身分産別以外のなにものでもありません。②子会社に出向した社員とプロパー社員で給与・待遇からかうという慣行も当たり前のように行なわれていますが、これも身分差別です。③サービス残業という習慣は日本以外にはありません。世界標準ではサーピス残業は「奴隷労慟」です。④定年は一定の年齢に達した社員を強制解雇する制度ですから、欧米では年齢差別と見なされるようになりました。新卒一括採用にいたっては日本の現行法でも違法で、厚労省か適用除外にしているだけです。⑤海外に子会社を持つ日本企業は本社採用と現地採用を異なる人事体系で管理していますが、これは国籍差別としてすでに問題視されています。⑥日本企業は形式的には男女平等になっていますが、現実には長時間労働(とサービス残業)によって会社に忠誠心を示さないと昇進できず、子育てをしている女性は管理職になれません。これが保守派が大好きな「日本的雇用」の本質で、「リべラル」な新聞社やテレビ局も同じうな「差別」を行なっています。…まずは自らの手で雇用差別を撤廃し、(世界基準で)リべラルな労働環境を実現してはどうでしよう。そのうえでりべラルの理念を主張するのなら、きっと多くのひとが耳を傾けるにちがいありません。ページ245