限界費用ゼロ社会

限界費用ゼロ社会」を読みました。衝撃的な未来予想です。現在、資本主義社会が協働型コモンズ経済に変わる過程にあるとの指摘です。シェアビジネスの台頭、クラウドファウンディングの隆盛、広告の衰退、非営利組織の発展、これらの現象の裏にあるのが、第三次産業革命による「限界費用ゼロ社会」の到来だと言っています。大部の本で時間は掛かりましたが懇切丁寧な説明で、よく理解できました。電力により貧困が解消する事実と仕組みが、よくわかりました。日本の大企業の幹部には必読書だと思います。備忘します。

限界費用ゼロ社会 〈モノのインターネット〉と共有型経済の台頭

限界費用ゼロ社会 〈モノのインターネット〉と共有型経済の台頭

垂直統合型の巨大企業は、大量生産される財とサービスの生産と流通を構成するのに最も効率の手段だった。サプライチェーンと生産過程と流通経路を、集中管理のもとで垂直統合型の企業にまとめると、劇的に取引コストを減らし、効率と生産性を上げ、生産と流通の限界費用を削り、消費者に対する財とサービスの対価価格をおおむね引き下げ、経済を繁栄させることができた。ページ88
IoTインフラに3-Dプリンティングのプロセスが組み込まれれば、世界中の事実上誰もがプロシューマーとなり、オープンソースのソフトウェアを利用し、使用やシェアの目的で自ら製品を生産することになる。ページ141
どの文明においても、コミュニケーション/エネルギー/輸送マトリクスが経済的権力を構成・分配する方法を決めるという概念を、ガンジーは意識してはっきり言葉に出すことはなかった。だが、資本主義体制下であれ社会主義体制下であれ、社会における産業構成には、生産流通過程の中央集中型の制御、人間の本性についての功利的な概念の擁護、それ自体を目的とする、とどまるところを知らない物的消費の追求といった、いくつかの指針となる前提が伴うことを、彼は直感的に知っていた。 ページ161
蒸気汽関によって人間は封建時代の農奴制から解き放たれ、資本主義市場で、物質的な私利を追求できるようになったとすれば、 IoTによって人間は市場経済から解放され、共同型コモンズにおいて、非物質的でシェアされた利益を追求できるようになった。ページ205
当面の課題は、世界中で IoTインフラの大規模な整備が実施されることに伴って生じる、新たな職種や商機への移行円滑に進めるために、既存の労働力を再教育したり、労働市場に参入する学生に適切な技能の育成を行ったりすることにある。ページ419
人類の歩んだ歴史を振り返ると、幸福は物質主義ではなく、共感に満ちた関わりの中に見いだされることがわかる。人生の黄昏時を迎えて、来し方を振り返ったとき、記憶の中にはっきりと浮かび上がるのが、物質的な利得や名声、財産であることはほとんどないだろう。ページ468
まだ日本は気づいていないが、台頭しつつある IoTは、これまでの歴史上あらゆる経済革命を特徴づけてきた三つの決定的な要素から成り立っている。その3つとはすなわち、より効率的に経済活動管理する新しいコミュニケーションテクノロジー、より効率的に経済活動に動力を提供する新しいエネルギー源、より効率的に経済活動を進める新しい輸送手段だ。ページ477