若き日本の肖像

「若き日本の肖像」を読みました。20世紀初頭の若き日本人がヨーロッパで格闘した物語です。その基礎の上で今の日本があることを強く認識しました。寺島実郎氏に知らないことをたくさん教えてもらいました。 川上音次郎の音源が100年ぶりに発見され、発売を機に聞いてみたそうです。日本の間違ったイメージ「切腹、富士山、芸者」を流布した張本人であると断じています。 日英同盟は日本、英国ともに対ロシアという敵を同じくする同盟であり、この日英同盟のおかげで日本は勝ち組として20年間過ごすことができたのだが、この成功体験が日米開戦の遠因にもなったことを知りました。クーデンホーフ・ミツ子の息子がEUの源流だというのにも驚きました。スペインのフランコ将軍の伝記らしきものを初めて知りましたが、ヒットラームッソリーニとは違い非常に慎重かつ現実的な政治家であったために戦後も最後のファシズムとして残ったと解説しています。鴎外は日本の国を背負って葛藤し無理をしているように見えること、漱石アイデンティティーに悩むものの冷徹に時代を見据えていたことがよくわかりました。備忘します。

渋沢栄一は後進たちが持ち込んでくる構想や提案を誠実に支援することによって自らが進化し続け、周りから盛り上げられることによって常に時代の中心にだったのである。人徳という言葉が身にしみる。ページ80
内発的でない日本の開花の限界という認識は、グローバルスタンダードの攻勢に受け身の対応を迫られている今日の日本にもそのまま当てはまるものであろう。漱石の存在感は決して新鮮さを失っていない。ページ91
広義のファシズムの共通項は民族的アイデンティティの暴力的協調と凝縮してよかろう。その意味で、グローバリズムが語られる現代においても、いやグローバリズムが古い秩序の枠を揺さぶる今日こそ、混迷への焦燥の中からナショナリズムへの回帰が新たなテーマとなりつつあり、新種のファシズムの台頭さえ予感される。ページ225