流れる星は生きている

流れる星は生きている」を読みました。 重い本です。先の大戦で中国満州に置き去りにされた藤原ていさんが、3人の幼子を連れて日本に帰り着くまでの実話です。「母は強し」なんていっているような生やさしい逃避行ではないです。ご主人(新田次郎氏)は中国政府に徴用され、ていさんはひとり満州から北朝鮮に逃げて、38度線で米軍に助けられたましたが、その後も、飢えと病に冒されながら博多に上陸、苦労しながら諏訪のご両親の元にたどり着くのです。壮絶な物語です。一つ間違えば全員死んでしまう中、智慧と工夫と勇気で乗り切ります。お金の価値を思い知らされました。お金で命が助かる事実に愕然とします。ひどい人間も沢山いる中、国籍をとわず親切な人も沢山いることを知りました。父も戦争の事はほとんど語りませんでした。叔父たちもその話題からは逃げるように口をつぐみました。語れないほど戦争の傷跡は深いのでしょう。5歳の息子さんがジフテリアにかかり、千円の血清がないと死んでしまうときに、周りの日本人がお金を皆で出し合ってくれたこと、それでも足らず。病院の医師はその足りないお金も受け取らず、ご主人の腕時計で血清を投与してくれたこと。ヒリヒリしました。そして、諏訪で一年ぶりに自分の姿を鏡でみたとき、「そこには私の幽霊が立っていた。灰色のぼうぼうの髪をして、青黒く土色に煙った顔に頬骨が飛び出して、眼はずっと奥の方に引っ込んで、あやしい光を帯びて私をじっと見つめている。」と。そしてつらいときに唄っていた唄がこの本の題名になりました。子供たちへの遺書として書いた本だそうです。今の私のしあわせをこころに刻みました。備忘します。

流れる星は生きている (中公文庫)

流れる星は生きている (中公文庫)

わたしの胸に生きている
あなたの行った北の空
ご覧なさいね 今晩も
泣いて送ったあの空に
流れる星は生きている