日本農業再生論

「日本農業再生論」を読みました。副題は「自然栽培革命で日本は世界一になる」です。「奇跡のリンゴ」木村氏と「ローマ法王に米を食べさせた男」高野氏の共著です。お二人とも還暦を過ぎてなお旺盛な行動と発信力をお持ちです。日本の農業を再生させるには栽培方法を「自然栽培」に転換させるしか方法はないという論考です。この本を読んで国内産の安全神話を打ち砕かれました。有機栽培の胡散臭さも薄々感じてはいましたが明快な否定の根拠を得ました。若い人たちの農業論ではJAや農水相批判に傾くのですが、この二人は、さすがに年の功もあり、協力してもらうことで安全な食は実現できると喝破しています。ロマンチストでありながらリアリスト、深い叡智を感じました。それにしてもお二人の「諦めない生き方」を見て、私などは足下にも及ばないと反省しました。備忘します。

日本農業再生論 「自然栽培」革命で日本は世界一になる!

日本農業再生論 「自然栽培」革命で日本は世界一になる!

ヨーロッパでは硝酸態窒素に対して厳しい規制があり、EUの基準値は現在およそ3,000ppmと決められています。それを超える野菜は市場に出してはならない。汚染野菜として扱われるのです。ところが日本にはその基準がなく野放し。農林水産省が不問に付しているからです。スーパーで売られているチンゲンサイを調べたら硝酸態窒素、いくらかわかりますか?  16,000ppmだよ。コメはどうか最低でも12,000ppm、とんでもない数値でした。ページ13
一般栽培の米は茶色くなって腐敗していきます。有機雪栽培の米は黒くドロドロになってカビが生え、強烈な悪臭を放ちます。自然栽培の米が腐敗しないで発酵し、酒のような匂いがするのです。有機栽培の米の腐敗が一番激しいんです。ページ107
モンサント社は)除草剤のラウンドアップでも有名で、市場拡大するため、唯一それに耐えるうる大豆や菜種、綿花などの遺伝子組み換えの種子をセット販売するなど、したたかな戦略で売り上げを急伸させ、バイオ革命家として世界屈指の規模を誇っています。モンサント社ページ117
公務員に向けて、ものの考え方や行動哲学を伝える声も増えました。…失敗した時のことを真っ先に考える役人、経験則もないのに知ったかぶりをする役人にはなるな、組織の中で認められようと思うな、地域住民に好かれようと思うな、嫌われる覚悟持たないと何も出来ない、などと厳しいことばかりを話しています。ページ142
羽咋市氷見市は、もともとは加賀藩でつながっているんですよ。しかも羽咋市の自宅から氷見市役所までは10数キロしか離れていない。ページ150
過疎地からの脱却のポイントは、一番ひどい場所にだけ手をを打つことです。行政の公平性を振りかざして、すべて平等に脱却させようとすると時間も労力もかかってしまう。そういう役人特有の発想では何も起きません。まずは一番ひどいところに絞って改善策をうち、そこから抜け出すことができたら、ほかの地域も自然に過疎から脱却できます。ページ153
売る三要素は、「ここだけ」「これだけ」「今だけ」なんですよ。そしてそれを地元ではなく遠いところに情報発信して、発せられた情報を逆輸入する。私は町おこしの製品の根幹はマスコミあると考えています。ページ154
組織もこの考えは当てはまります。短命で終わる会社は、自分たちの利益しか考えていない。長続きする会社は、お客さんやクライアント、地域から喜ばれている組織なんですよ。ページ175
農家が錯覚しているのは「俺の大根みてくれ。ほら葉っぱを虫が食っているほどうまいんだ」と。けれども虫が食うほど危ないんです。化学肥料使ったり、未熟な堆肥を使ったりするので、硝酸濃度が高くなって虫が来るんです。それで虫が来るから農薬を撒くんです。ページ182
木村さんも11年間あきらめなかったから「奇跡のリンゴ」を作ることができた。艱難辛苦の一日一秒を過ごす中で、立派なリンゴを作るには農薬は必要だとか、肥料はよく施しなさいとか言う常識が、ことごとく当てにならないことを経験していきました。わずかな可能性を信じたからこそ得られた新しい常識。ページ204
その中でロボットができないことは、この栽培です。取れた野菜の選別とか梱包とか発送は機械ができるけど、生産は無理。人にしか出来ません。ハウス栽培なら別ですが実際に試みたオランダのように、維持費がかかりすぎて、経営が思うようにならない。例えばキュウリの収穫、ロボットがやる時代がくるかもならないけれども、高い金をかけてロボットを導入するほど利益が出るかといえば、でないと思います。ページ279