ファウスト 第一部

ファウスト 第一部」を読みました。身につまされる話です。「終わった人」が、沸き立つような人生を繰り返そうとする哀しい物語です。本書は、名前は知っていても読まれることの希な名著です。私にとっても購入は20年近く前です。勇気を出して読んでみました。正直、誤読を恐れています。劇の構成、言葉のやりとり、きっと全てに特別な意味やからくりがあるのだろう…  第一部は「愛」の物語です。年老いた高名な学者が、世を儚み、世を恨んでいました。主は悪魔メフェストフェレスに「なんとかしてやれ」と命じ、メフェストはファウストと契約、青春を取り戻すよう計らいます。通りすがりの娘、マルガレーテと恋に落ち、悲劇が訪れるという筋書きです。沢田研二の歌に「時よ止まれ、君は美しい」という部分があったと記憶しています。これが「ファウスト」からの一節であることは知っていましたが、メフィストとの約束だとは知りませんでした。この言葉をファウストが発すれば悪魔の勝ちという契約でした。もうひとつ「不幸になった女はあいつだけじゃないという言葉が、愛する人に対する最大の裏切りの言葉だ」と誰かのエッセイにありましたが、ファウストの言葉ではなくメフェストの言葉だと知って意外でした。ノストラダムスへの言及も確かにありました。備忘します。

ファウスト (第1部)

ファウスト (第1部)

ここにノストラダムスが手ずから書いた本がある。神秘がいっぱい詰まっている。これ1つで十分だ。自然の指図に従えばいい。星の運行見つめていよ。そうすれば霊が仲間を呼ぶようにして魂の力が目覚めるだろう。ページ27
どうだ、壁の周りに書物が積み重なって塀になっている。これだってゴミではないのか。実験道具ときたら、さながら虫の住処だ。これもゴミに違いない。自分にないものを、血眼になって見つけようとしてきた。山のような本を読んでわかったことといえば、せいぜいのところ、この世には苦しんでいる人もどっさりいて、そこにちらほら、幸せ者がいるといったことぐらいだ。ページ37
かための握手だ! そうだ、こうしよう、もしとっさにいったとする、時よ、とどまれ、おまえはじつに美しいーーもし、そんな言葉がこの口から漏れたら、すぐさま鎖につなぐがいい。よろこんで滅びてゆこう。葬いの鐘が鳴る。ページ80
…今なんと言った、「はじめてのおかたでもなかろう」とな。1人では済まないというのか。はじめてのおかたが、すべての罪をあがなっても、それでも足りないというのだな。ページ229