衰亡の法則

「衰亡の法則」を読みました。「衰退」をテーマにして文明、社会、国家し、産業、企業の栄華盛衰を分析しています。30年以上も前に書かれた本ですが、概ね当たっているようです。著者に敬意を評します。
「第1文明(エジプト、メソポタミア、インダス)は滅び、第2文明(ギリシャ。ローマ、インド、シナ)が外敵により滅び、第3文明(西欧と日本)が成熟期にある、さらに第4文明(ソ連とアメリカ)は早すぎる発展で崩壊する。残るのは日本だ」という歴史認識です。バブル崩壊前の日本の興隆と自信を反映しているようです。いたずらに楽観することなく、まして悲観することなく歴史を見ていきたいと思いました。備忘します。

衰亡の法則 (PHP文庫)

衰亡の法則 (PHP文庫)

なぜこのような技術の代謝が起こるのか、国家によってなぜ代謝の速度が違うのかということであろう。そしてこれらの疑問は当然、われわれはどこへ行くのかということにならざるを得ない。…すなわち人間の営の根本は物理法則に支配されているのだろうとする立場からすれば、この技術の新陳代謝、ひいては社会の変化、国家の交流は、単純な物理的過程であるはずである。それはエネルギーだ。これが私の回答である。ページ31
シナ、インド、ギリシャローマの3大文明は、南西アジアの大地文明を継承して、それに独自の発展を加えた第II次文明だということになる。ページ48
すなわち科学技術文明においては、われわれは彼らをはるかに抜き去っているが、宗教、思想、哲学において、第II文明の優越は動かしがたい。ページ57
日本にキリスト教の神が渡ってきたのが中世末であった。日本人固有の判断力と、すでに中世を終わっていたその文明度は、キリスト教の撃退に成功した。ヨーロッパは長い間この神に巣食われていたのだが、神の存在しない日本は、今後の速やかな文明発展を約束されている。ページ86
…経済が政治に優先するという自然法則を信頼するわけである。カルロス5世からヒトラー、東條まで、この構造に政治、社会構造持ち込もうとしたもの全て挫折している。このことは16世紀以来の世界経済システムが文明進化の必然であることを示している。ページ112
私はアメリカもソ連も、そのプロセスは違うにしても、いずれも今世紀内に、その稲妻のような大強国の時代を終わり、崩壊に向かうものと考えている。おそらくソ連は国内、特に衛星国の社会騒擾から、アメリカは社会の腐敗から、倒壊するであろう。ページ134
個体の生存、文明の維持には、食料、工業原材料とともに、エネルギーの供給が絶対的要件である。人間であれ文明であれ、生存する、または発育、発展するということは、本来無秩序である自然の中に、ある境域を設けて、その閉じられた中で秩序を保つことを意味する。… 秩序を維持するためには生命あるいは文明活動によって普段に排出される高エントロピーを除去するために、外界からこの境界を通じて、エントロピーを供給してやらなければならない。食料とか石油はこの低エントロピー源なのである。ページ143
企業という組織は、ハード、ソフトの原料、つまり高エントロピーの物件にエネルギーをくわえて、低エントロピーに持ちきたす機関だということになる。機関であるならば、当然その効率が問題となる。つまり少ないエネルギーインプットで、より大きい売上高アウトプットを達成するのは良好な企業であり、その競争に遅れをとるものは淘汰される。ページ165
第I文明は、数千年前に滅亡してしまったエジプト、メソポタミア、インダスの4つの始原文明を含む。それを高度な文明として発生したのが、ギリシャ、ローマ、インド、シナの第II文明である。これら4つは距離的には遠く隔たっているが、時期的にはほぼ同時に発生し、共に第I文明の影響を色濃く残すとともに、それぞれが宗教、哲学に優れたという共通点を持っている。 この第II文明はすでにその最盛期を過ぎ、外敵の侵入によって衰えてしまった。しかし文明の波自体は、その後もユーラシア大陸上で拡散を続け、第I文明の誕生以来約5000年を経て、ついに大陸の両端、すなわち西欧および日本に達し、第3部明を産んだ。これが西欧および日本文明であり、両者ともに科学、技術。経済に優れ、現在その成熟期を迎えている。 文明よりもさらに遅れた拡散の波の結果として生まれたのは、ユーラシア大陸の内陸部のソ連文明と北米大陸アメリカ文明であって、この2つが第4文明をなす。ページ215