饗宴

プラトンの「饗宴」をキンドルで読みました。昔、途中で挫折しましたが、今回の「饗宴」は解説も含めて非常にわかりやすい訳になっています。現代の日本人が理解できるような易しい言葉で翻訳しています。解説部分で男同士の愛について詳しいので、これまでその部分は現代に合わないのかなという気がしておりましたが、現代のホモセクシュアルとはまた違うということを理解しました。日本で言うところの「若者宿」だったようです。

「饗宴」のあらすじ。宴会の席でエロス賛美の演説 を行うこととなる。パイドロス、パウサニアス、エリュクシマコス、アリストパネス、アガトンが順に演説を行う。そしてソクラテスが演説する。ソクラテスは自分の説ではなく、覚醒者ディオティマに聞いた説として、愛の教説を語る。愛(エロス)とは欠乏と富裕から生まれ、その両方の性質を備えている。ゆえに不死のものではないが、神的な性質を備え、不死を欲求する。愛には幾つかの段階があり、生物的な再生産から、他者への教育による再生産へと向かう。愛がもとめるべきもっとも美しいものは、永遠なる美のイデアであり、美のイデアを求めることが最も優れている。これを求めることこそがもっとも高次の愛である。演説後、アルキビアデスが乱入する。アルキビアデスはすでに酔っており、ソクラテスとの愛の経緯と戦場でソクラテスの態度がいかに立派なものであったかを語る。饗宴は、夜通し続き、みなが寝静まったところに、ソクラテスは酔うこともなく出て行く。

プラトンのエロスの本質、イデアの考え方を理解しました。それにしてもアリストファネスのエロスは欠落を求めると言う論は魅力的でした。足りないところを余っているところで塞いで完全にすると言う古事記イザナギイザナミノミコトにつながるように感じました。それぞれの論を否定するでもなく、覚醒者ディオティマの口を借りて高みに引っ張っていく論建てに小気味良さを感じました。ソクラテスは著作を残していませんがプラトンという優秀な弟子を得て非常に良かったと思います。プラトンから見てソクラテスは重要なメンターです。「ソクラテスの弁明」を読んだ時も感じましたが、プラトンラはソクラテスから大きな影響受けています。ソクラテスプラトンそしてアリストテレスにつながるギリシャの3大哲学者が同時代に出現したのは影響しあってそうなったとも言えるかもしれません。またインドの釈迦、中国の孔子など、現代の哲学の基礎をなす巨人たちが、ほぼ同じ時代に生まれたことに驚きを禁じません。 備忘します。

饗宴 (光文社古典新訳文庫)

饗宴 (光文社古典新訳文庫)

アリストファネスの話は 、エロスをより人間的な文脈に近づけたものだといえるでしょう 。また 、アリストファネスの論点は 、その後のディオティマの議論に引き継がれていく側面を持ちます 。すなわち 、エロスの本質は欠如にあるという発想です 。これは 、それまでの演説では見られなかった発想であり 、アリストファネスの直観的な想像力によって 、初めてもたらされた視点です 。この点で 、ディオティマのエロス論は 、アリストファネスのエロス論の発想を引き継いでいるといえそうです 。ページ83%