松下幸之助の見方・考え方

松下幸之助の見方・考え方」を読みました。PHP研究所のムック本です。内容について、ただただ脱帽しています。神様はすごい! 備忘します。

松下幸之助の見方・考え方―ビジネスの王道はこうして歩め!

松下幸之助の見方・考え方―ビジネスの王道はこうして歩め!

幸之助さんは、組織の中では、経営者は軍師になってはいけないと書いています。優秀な経営者ほど軍師になって自分で作戦を立てようとします。でも、作戦を立てるのは軍師の仕事です。経営者は大将です。軍師が立てた色々な作戦の中から取拾選択します。軍師が立てたた作戦は、すべて正しい。軍師は正しいことを考えればいいだけですから楽です。正しいもの中から正しいものを取って、正しいものを捨てていくのです。正しいものを取るのは、誰でもできます。でも正しいものを捨てることができないのです。これが経営者の仕事です。 (7ページ)
お得意を増やす努力はもちろん大切だが、現在のお得意様を守ることも劣らず大事なことでしょう。一軒のお得意を守ることが、 100軒のお得意を増やすことになる。一軒のお得意を失う事は、 100軒のお得意を失うことになる、そういう気持ちが肝心でしょう。 (30ページ)
ある場合には損をするということが、さも常道のごとく、商売は損して得とれやと言って、原価をわって、売るというのは、かえってお客さんに申し訳ないわけですわね。なぜかと言うと、お客さんは儲けさせてやろうと思うて買ってくれてるんですから。商売というものは絶対に損しないものである。商売はすればするほど儲かる、損は絶対にありえない、これが商売の常道であります。 (35ページ)
広告は、経営者自身が精神を込めてやる。経営者自身が広告するようでなくてはあきませんわ。広告代理店がやってくれているから、そこに任せとったら、というのではダメです。経営者が、自分で精神を込めてやる。そういう風にやっているところは、みんな成功しています。逆に、宣伝部に任せきりのところはあきまへん。(37ページ)
経営者である以上は「来年はこういうことをやろう」「こういう品物を作ろう」というように、常に要望者であらねばなりません。要望の弱いところでは人は育ちません。しかし非常にそれが適切で強いものだと人が育ってくる。そしてその要望を達成する働きをしてくれる。すると、それをお得意様も喜んでくださる。会社自体も発展するし、部下の社員も育成されるということで、大変順調にいくわけです。(39ページ)
社員を…よく叱ったものですよ。こんなことがわからんのかと言うてしかったりしますけどな。しかし大きな失敗をした場合には、むしろこっちがそれを引き受けてやらないといかんですよ。(40ページ)
「伝票は?」「はい、社長に代わって私が仮出金の手続きを済ませました」「その伝票をもって来てくれ」「なぁ君、社長だからといって備えられた手続きをおろそかにするようなことがあってはいかんで。(55ページ)
「これらの書類は今日限り廃止や。20日間も見ないで済む書類を、なんで集めたり出したりしているのか。もうやめや」本来必要なある目的のためになされる仕事が時間が経つにつれていつの間にか陳腐化し、形骸化し、意味が薄れているのに惰性で続けられられていることが少なくない。(61ページ)
「君が電熱担当の課長か」「はいそうです」「会社入って何年になるかね」「18年になります」「キミ明日から会社を辞めてくれ」「…」「今会社を辞めたら困るか」「困ります、幼い子供が2人いますし」「それは金がないからだろう。君が困らないように金は貸してやろう。そのかわり、ワシの言う通りにやれよ」「はい」「会社を辞めてしるこ屋になれ」(68ページ)
ある新聞記者に「松下電器の成功の秘訣はどういうところにあるのか」と問われて幸之助は、その記者に「雨が降ればあんたはどうしますか」と問い返した。そして「わたしなら傘をさします」と言う記者に「そうそれが秘訣ですよ」と答えている。(70ページ)
…経営のコツはどうすればつかめるのか。幸之助は次のように言っている。「これがいわく言いがたし、教えるに教えられない。経営学は学べるが、生きた経営のコツは、教えてもらって分かったと言うようなものでは無い。いわば一種の悟りともいえよう。つまり、日々の生活の中で、仕事に一所懸命取り組みつつ、その都度、これは成功であったとか、成功ではあったが、ここは完全ではなかった、という具合に反省を重ねる。そういうことがやがて、意識しないでもできるようになることが必要で、そういうことを繰り返していると、だんだん間違いをしないようになる、そういうことが経営のコツがわかってきた、ということになるのではないか」 学ぶのでは無い、毎日の仕事に意識を働かせ、身を以て体得するのが経営のコツであり、これを会得すればその価値は計り知れない、というのである。(74ページ)
幸之助は社長として部下に命令を下すときでも、相談を持ちかけるような調子でやってきたと言う。つまり単に「こうしてく」れというのではなく「こういうことをしようと思うが、君はどう思うか」あるいは「君やってくれるか」という具合である。そうすると部下のほうも「私も賛成です、是非やりましょううか」「ここはこうした方がいいのではないですか」というように意見判断を加えやすくなり、結果的に自主的に仕事に取り組んでくれることが多かったと言う。人間は自由な意志、自主的な責任において仕事をする時一段と力を発揮するのである。その人情の機微をを的確につかんだ人材活用法であろう。 (81ページ)
幸之助は物事がうまく運んだ時は「これは運が良かった」と考え、うまくいかなかった時は「その原因は自分にある」と考えるようにしてきたという。つまり成功は運のせいだが、失敗は自分のせいだというのである。(88ページ)