十頁だけ読んでごらんなさい。十頁たって飽いたらこの本を捨ててくだ

「十頁だけ読んでごらんなさい。十頁たって飽いたらこの本を捨ててくださって宜しい」を読みました。手紙の書き方の指南書です。時代を超えて勉強になりました。メール全盛の今日でも十分に有用です。遠藤周作さんは1996年に亡くなっていますが、その十年後に発見された原稿を本にしたそうです。ですからこの本が出版されたのは2006年で、それから3年後に文庫になってます。私は、その話を誰かから聞いてこの本を購入し、本棚で1年ぐらい寝たのち、ようやく読んでみました。良い本です。備忘します。

新鮮味のない手垢で汚れた句は読む側に何の感興も、感動も起こさぬ事は事実です。早い話、僕はこういう手紙を書くとき冒頭の1 、 2行は大抵飛ばして読んでいます。描いてくださった方には大変失礼ですが、日本人の手紙の最初の1 、 2行によほど形式的なものはないからです。それは概ね時候の挨拶にあらずんば、突然お手紙差し上げる失礼をお許しくださいの冒頭で始まるのである。だから絶対に書かないほうが良いとまでは申しませんが、同じ労力を使うならs子さんの好奇心や関心をもっと新鮮な形でキャッチする言葉で書き出したらどうでしょう。( 63ページ)
以上の3点が病人への3倍以上のコツだと申し上げておきましょう。・月並みの文句は書く ・病人を苛立たせ、ひがますことを書くな ・病人に同じ病気の人の不幸を書くな、同じ病気の人の全快を知らせよ (87ページ)71
…ところが女性というものはちょうど牛が一度たべたものを胃袋からゲッと吐いて、また、もぐもぐとかみしめるように、過去のことを何度も何度も味わうのが大好きなのです。この女性の反芻的な傾向を貴方を察したほうが得でしょう。婚約記念日や思い出深い日には手紙が彼女のところに着くように−その日に書いてはダメです。−その日に彼女の手元に着くようにたった1枚のハガキで良いから出すと非常に良い効果を与えるものです。 (137ページ)
…この人はほとんど普通の人のように暑中見舞い正月の年始状は書かない。こうしたものを書いてもあまりに習慣的であり、相手に虚礼とみなされやすいことを知っているからであります。そのかわり、彼はいつも1冊の小さなノートを用意してある。そのノートの中には、先輩、知人、友人の誕生日や、その人たちの子供の生まれた日やその名前がちゃんと月ごとに気にしてあるのです。…先輩友人知人の誕生日や命日を書いたノートによって、彼はハガキを通勤の途中、車を待つホームで書いて投函するのであります。それも別に点数はいらない。ただ今日はあなたの誕生日ですねおめでとうこの1行だけなのです僕も毎年このハガキをもらうのですが、いつもうれしく思っています。あれは僕の誕生日を覚えていてくれた、そう思うだけで、いわゆる年始状や暑中見舞いよりも遥かに心に残るのは当然のことと言えましょう。ちょっとした手紙やはがきを送る時のコツはこれなのです。 (165ページ)