マイナス金利

なあんだ、もう日本経済は、破綻していたのか。「デリバティブ市場は、ドルベースで、上乗せ金利が最もワイドなのは、日本国債であること、つまり国債は、すでに暴落してしまっていることを知っている」緊急で「マイナス金利」という本を読んでみました。副題は「ハイパーインフレよりも怖い日本経済の末路」です。日銀のマイナス金利政策の3ヶ月前に発刊された本です。専門的な内容をわかりやすく解説しています。大変勉強になりました。備忘します。

マイナス金利

マイナス金利

…異次元の金融緩和により、円というマネーの供給が加速的に増加したことから、円を借りたい人よりもドルを買いたい人のほうがはるかに多くなった。そのため円を借りてくれる人に対して、円を貸す側が大幅値引きをするようになったのである。ページ12
…つまり、円をマイナス金利で調達した海外投資家が、超低金利国債であっても、サヤを抜けると投資してきたからである。2年国債も、一時的にではあるがマイナス金利で取引され、現在は0パーセントすれすれのところで推移している。ページ13
…日本のマイナス金利の発生の背景を探っていくと、「財政リスクがあるのに金利が低い」のではなく、「財政リスクがあるからマイナス金利がある」という逆説的な結論に到達するのである。…財政リスクが金利高騰ではなくその対極のマイナス金利につながっているというパラドックスは、本来経済成長促進するはずだった低金利が高成長どころか逆にマイナス成長をもたらすというパラドックスにもつながる。ページ15
日銀が大量に資産を購入するといっても、存在する以上の資産を購入できるわけではない。つまり、量的緩和財政赤字とセットになっている。中央銀行国債を直接引き受けるマネタイゼーションに限りなく近い。その歴史的結末はハイパーインフレという強い痛みだった。ページ74
潜在成長率が低下していること、またその原因についてはある程度の合意がある。その主因は先進国の経済が成熟段階にきていること、人口がもはや増加していないことだ。人口が増えなくても、イノベーションさえあれば成長は可能だという議論もある。…経済成長率はそれだけでは結果的に押し上げられていない。その点からは、イノベーションだけでは経済全体を成長させることは困難だと言うべきかもしれない。ページ88
財政赤字を削減するためには支出削減や増税を行うのが王道である。しかし、それらは痛みを伴うし、議会の承認も必要だ。しかし前述のような低金利誘導はそのような手続き手続きを経ることなく密かにできてしまう。低金利については、どこまでが景気促進目的で、どこからが金融抑圧のかは厳密に線引きすることはできない。また規制強化についても金融システムを守るためという大義名分が常にあり、特にリーマンショック後には前面に出しやすくなった。だからこそ、金融抑圧は国家にとって都合の良い財政緊縮回避手段となってしまっている。ページ99
もし暴落と破綻が起こってしまえば、その後には再生することもできる。しかし、マイナス金利によって徐々に国の借金が国民の資産によって少しずつ強制的に埋め合わされていく形なれば、衰弱死的な経済になっていくように思われる。そのような展開はある意味破綻よりも怖いとは言えないだろうか? page 168
デリバティブ市場はドルベースで上乗せ金利が最もワイドなのは日本国債であること、つまり国債はすでに暴落してしまっていることを知っている。ページ238
マイナス金利が最終的にはマイナス成長を招くという展開が構造的になっていくのを避けるには、低成長を正面から受け入れ、財政規律を取り戻すこと以外ないと思う。日本のマイナス金利は市場が財政懸念を感じていないからではない。むしろ、グローバル経済の中で実は海外投資家だけが日本国債に対する上乗せ金利を受け取る仕組みができている、という事実はより広く認識されるべきだろう。ページ259