ロボットとは何か

「心の存在を信じない人間や、心を探さない人間は機械になる」まさに哲学書です。人間酷似型ロボットの第一人者「石黒浩」さんの著書です。自分と同じ顔をしたアンドロイドを作り、それを外から眺めると、どんな気分になるのか、科学者の目で冷徹に見ています。生命の深淵に触れたような気になりました。近い将来、ロボット、アンドロイドは世界を一変させるでしょう、インターネット同様に。凄い本です。備忘します。

ロボットとは何か――人の心を映す鏡  (講談社現代新書)

ロボットとは何か――人の心を映す鏡 (講談社現代新書)

ロボットは一種のメディアである。…人間本来の性質に鑑みれば、擬人化しやすい人間型ロボットが、ほかのメディアよりも親しみやすいメディアになることは容易に想像できる。ページ28
「人間を理解する」という非常に単純な目的のために、これまでロボットを開発してきた。この目的は単純だが、ゆえに、多くの基本問題に気付かせてくれた。ページ30
ロボットの研究とは人間を知ることであるという結論に行き着いた。人間の誰しもが気軽に関わることができる、日常生活で利用できる機械の実現を目指して、ロボットの研究に取り組んできたのであるが、その最もお手本とすべきでは、人間そのものである。故にロボットの開発と人間理解がむしろ結びつくのはごく自然なことなのである。一方でこの基本問題はロボットを研究だけにあてはまるものではない。いかなる分野いかなる仕事に携わっていても行き着くところ、あらゆることの基本問題となるのは「物事の起源と人間」しかないことに気がつく。ページ36
…人間に酷似したアンドロイドを見たとき、意識すればそれが人間でないことにすぐに気がつくが、意識しなければ、常に人間であると認識する可能性がある。この可能性が、人間らしいアンドロイドと、ただのロボットとの大きな違いである。無意識には人間として認識されるのがアンドロイドである。ページ71
人間は自分でさえも表面的にしか認識していないのである。体の中身はそれが何入れ替わっていても、気が付かない可能性がある。ページ84
他人の反応を通して自分を知るということは、同時に、人間社会の最も基本的なメカニズムを構成する重要な要因であるとも考えられる。他人の反応を見ながら自分を知る。全員でその連鎖を作りながら、互いに自分はうまく行動していると信じながら、人間関係を形成し社会を形成している。「社会がなければ人間は自分のことを知ることができない」のだろう。人間は社会的動物であるといわれるが、その理由がここにあるように思う。ページ94
「人は表面的にしか人を認識していない」というのはかなり真実に近いと思う。表面的にしか得られない情報を元に、その人の本質を理解しようとして、理解した気分になる。人を理解することなどできないのに、できた気分になるというのは、人間の不思議な側面のひとつだ。ページ121
心とは、感情とは、人間が人間同士や、人間とロボットの相互作用を見て感じる、主観的な現象である。そして、それは優れた直感を持つ演出家の力を借りれば、十分にロボットでも再現可能なものである。また加えて大事なことは、人間は自分に心があるかどうかわからないが、他者は心をもつと信じることによって、自らにも心があると思い込むことのできることである。ページ153
「心の存在を信じない人間や心を探さない人間は機械になる」心とか命とか、物理的に定義できないものを基準に、自分が誰か、他人が何を思っているかを判断しようとする行為はまさに、哲学であり、人間らしくもあると私は思っている。ページ159
ロボットは、パソコンにセンサやアクチュエータがひっついたようなものである。ロボット制御しているのパソコンそのものだからである。そして、世の中で様々なセンサが使われその延長線でロボットが徐々に人間社会に浸透し、それを変革しながら人間の生活になくてはならないものになるのはそれほど遠い将来ではない。ページ210
ロボットは、時間空間をに加え、人の存在を超えて、人と人とを結びつける可能性がある。そう考えれば、ロボットがインターネットのように我々の世界に深く入り込み、生活のスタイルに大きな変革をもたらす可能性もあると思えてくる。ページ226