安売王一代

ドン・キホーテの創業者、安田隆夫氏の一代記です。「起業しようとする人は、'見'(様子を見る)すべき局面もあるということを知っておいたほうがいい」以前の私に欠けていたところです。徒手空拳、7000億企業を育てた立志伝中の人の話、心にしみました。特に、劣等感から生じた「アニマルスピリット」に感嘆しました。再挑戦の勇気が出ました。備忘します。

…私はドンキホーテ1号店の時代から、商品の仕入れ、陳列、販売とに至るまで、店の業務は全て部下に権限移譲し、一切口を出さなかった。これはまさに業界の常識を覆す発想だが…苦肉の策だった。だが結果的に、部下に全幅の信頼を置いて権限移譲したからこそ、社員は見違えるように働きだした。私自身は店舗開発とか財務戦略など、これだけは経営者がやらなければならないという中核業務だけに集中することができた。ページ8
普段から泥棒市場には祭り間があった。ところで、夜の経済と不可分な要素が祭りだ。古今東西、電気のない時代から、祭りは夜によるものと相場が決まっている。ページ30
…私の信条は「攻めは他人がやらないことをアグレッシブに、しかし守りはベーシック」に行った。そもそも守りの基礎ができていなければ、アグレッシブな攻撃など怖くて仕掛けようがない。ページ84
真面目で能力と才能にも恵まれているのに、なぜかビジネスでうまくいかない人がいる。そんな人は、私に言わせると、「見」ができていない。常に全力疾走でいると、危険を知らせる微妙な変化にも気づかないのだ。彼らには一生懸命であるあまり、自分の墓穴を掘るにも一生懸命になってしまう。ビジネスは長期戦だ。これから起業しようとする人は、いたずらに尻込みする必要はないが、「見」すべき局面もあるということを知っておいたほうがいい。ページ86
こうした苦難の連続から、ドンキは企業として多くのことを学んだ。中でも最大の教訓が、「より良い社会に向け貢献できる企業にならなければだめ」ということだ。すなわち、当社の経営理念第一条で謳う「無私で正直な商売」こそ、社会と優れた共生をしていく上での最大のキーワードだ。ページ140
私の経験上、こうした一見尤もらしい理論が一番危ない。IQの高い人が過ちを犯すのは、理路整然と経営を行い、理路整然と間違うからだ。ページ173
だからこそ「はらわた」をすえ、常にねばり強く戦い続けなければならない。繰り返すが、格闘における最大の武器は「はらわた」である。そしてあなたの核を形成するのは、何が何でもこうありたいという自己実現の強烈な思いと執念、ひたむきさに他ならない。ページ189
例えば学校の秀才は、問題があって必ず答えがあると言う世界に生きている。しかしビジネスでは、見えないボトルネックの存在を認識できなければだめだ。さらに、ボトルネックはいつもその形が異なるし、答えもその都度異なる。1つの方法だけでなく、いくつかの方法を組み合わせて、やっと抜けられる場合もある。ページ199
チャンスがある時に機敏な対応しない人が、チャンスがない時に的確な対応をしない人よりも、もっと不幸になる。ついているときは思いっきりビッドを張って勝負にいくべきである。しかしついてない時、もしくはどちらかわからないときは、じっと耐えて何もせずひたすら守りに徹するのが得策である。ページ218
人は人のことなどわからない。だから時間のテストが必要になる。ここで言う時間のテストのタームは、多くの場合、短くて3〜4ヶ月、長くて1年といったところだろうか。ページ226