シルバー・デモクラシー

「シルバー・デモクラシー」を読みました。昭和22年生まれの寺島実郎氏の団塊の世代代表としての提言です。驚いたことに1980年の彼の論文で、すでに化石燃料からの脱却が必要であると述べていました。さらに後半、著作の中で農業の可能性に触れています。私も薄々、農業は重要ではないかと思っていましたので嬉しくなりました。農業とIoTを結びつけることが私の使命かもしれません。それにしても老いた民間人の私たちが子孫に残せるものを真剣に考えなければならないと思いました。備忘します。

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戦後の残滓というべき課題、安全保障、原発、沖縄基地などの問題を突き詰めるならば、結局のところアメリカとの関係であり、「反米・嫌米」の次元を超えて、真剣に日米戦略対話を進める決意と構想力が求められているわけで、対米関係の再設計なくしては日本の新しい時代は開かれないのである。ページ14
全共闘運動が、あれだけの広範な学生のエネルギーを吸収しえたのは、1つの政治目標達成しようとする目的意識的運動だったからではない。戦後の政治経済構造に由来する社会病理を全否定しようとする感性の世界への拒否反応だったからである。ページ48
すなわち、なんに関し「しらけ」、なんに関し「熱中」するのかを重視するならば、社会的テーマに関し「しらけ」個人的テーマに関し「熱中する」という傾向が、戦後世代化の中で強く進展していることに気づくのである。ページ60
突き詰めて言えば「福祉」の本質は金ではない。年金や医療や老人ホームをいくら充実させたとしても、例えば「誰が寝たきり老人の世話をするのか」という現実の薬務の問題が残るのである。ページ76
かつて人間が食料資料から工作に進化させたごとく、化石燃料地中化ラッシュ終了して消費するだけではなく、再生可能エネルギーを利用して、エネルギーを工作する文明の転換を図るという主張は、一見荒唐無稽に見えて、重大なヒント含んでいる。ページ79
これまでも再三言及してきたことだが、団塊の世代が戦後日本という環境に培養され、身に付けてきた価値観を集約的に表現するならば、「私的生活主義(ミーイズム)」と「経済主義(拝金主義)」といえる。ページ91
結局、アベノミクスの恩恵を受けるのは、資産保有する高齢者と円安メリットを受ける輸出指向型企業だという構図がはっきりとしてきた。ここから生ずる世代間格差と分配の適正化という問題意識を持たねば、金融政策に過剰に依存して調整インフレを実現しようとする政策は社会構造の歪みを招き、間違った国へと向かわせるであろう。ページ128
例えば県民幸福度において上位ランクにでてくる北陸3県や長野県における高齢化社会の実情じっくり見つめて、つくづく思うのは、田舎の高齢化社会は、まだ制御可能であり、高齢者が幸福を実現できる社会を形成できる可能性が高いということである。 その理由は高齢者が参画できる手立てとしての土台、インフラとしての第一次産業が生活の至近距離にあるということであり、それが高齢化社会の質を変えるということである。ページ164
「食と農」を至近距離に引き寄せる社会システムを実現することが、高齢者に安定した豊饒な人生をもたらし、日本の産業構造の重心を低いものにするだろう。ページ177