動的平衡2

動的平衡2」を読みました。動的平衡を正面から論じた本ではありませんでした。いろいろな雑誌記事を動的平衡の視点から並び変えてまとめた本です。がっかりもしましたが、知らないことも多く興味深く読みました。ソメイヨシノが一代雑種で種から増殖できないことを初めて知りました。ワシントンの桜も皆クローンであることに驚きました。身体にとってどれだけ水が大切か、腎臓の働きが偉大かということもよくわかりました。ファーブル昆虫記はいつか読みたい書物になりました。備忘します。

動的平衡2 生命は自由になれるのか

動的平衡2 生命は自由になれるのか

ソメイヨシノは一代雑種である。一代雑種とは異なる系統を掛け合わせてできる交配種のことで、ソメイヨシノコマツオトメとオオシマヒガンを交配したもの。その起源は諸説あるが、江戸時代後期に天然の交配が発見されたか、あるいは人為的に作り出された。その後明治期に入り、江戸の染井村の造園業者によって育成され、全国に広まった。一代雑種は多くの場合、子孫を残す能力が劣ってしまう。ページ60
つまり身体というものは、ある決まった状態をとどめていることは一瞬たりともない。眠っているときも食べているときも、体中でいつも新しいアミノ酸を必要とし、それを使って体を分解、合成し、代謝物を排出するという循環を続けている。ページ85
BCAAは、加齢による衰えを少しでも食い止める、高齢者の筋力アップにも活用できる。近年問題視されているロコモティブシンドローム対策としても大きな効果を期待できるのである。ページ98
パリの自然史博物館付属植物園にラマルクの鏡像がある。そこには晩年、目が見えなくなったらラマルクの執筆を助けた娘コルネイユの言葉が刻み込まれている。「後世の人々は貴方を讃え、あなたのために復讐してくれるでしょう、お父さん」ページ198
子供の期間が長く、子供の特徴残したままゆっくりと性成熟することを生物学用語で「ネオテニー」と呼ぶ。…このことこそが知性の発達に手を貸すことになった。要するにヒトはサルの「ネオテニー」として進化したというのだ。なかなか魅力的な仮説ではないだろうか。ページ212
動的平衡には負の対抗制御というものもある。ステロイド剤を服用し続けると、体内のステロイド合成反応がサボるようになる。だから急に服用やめると、体内のステロイドが不足して、様々な不調が出現する。ページ219
私たちは尿によって水を捨てているのではなく、水の流れに乗せてエントロピーを捨てているのだ。必要なのはこのシステムを駆動するための絶え間ない流れ、つまり水のサプライなのである。だからこそ、私たちは自分の健康のため、日々、良質の水を摂取することが大切である。ページ223
ガンという病には、生命とは何かという問いが余すところなく内包されている。生命とは動的平衡保とうとする、柔軟で可変的な存在である。押せば押し返し、沈めようとすれば浮かび上がるとする。がんの振る舞いほどそれを体現してるものもない。ページ238
すべてのシステムは、磨耗し、酸化し、ミスが蓄積し、やがて障害が起こる。つまりエントロピー=乱雑さは、常に増大する。このことをあらかじめ折り込み、エントロピー増大の法則が秩序を壊すよりも先回りして自ら壊し、そして再構築する。生物が採用しているこの自転車操業的なあり方、これが動的平衡である。ページ243