日本農業の真実

「日本農業の真実」を読みました。以前より食料安全保障は気になっていました。輸入が止まれば国民は飢えてしまうという問題意識です。この恐れを巧みに利用しているのが、政治家であり農水相であり農協であると理解しました。自給率にもカロリー自給率と生産額自給率があり、カロリー自給率は20数パーセントであるために危機感を煽りやすいのです。でも自給率より輸入が止まった時の自給力の方がよっぽど重要です。自給自足が可能かどうかです。減反をはじめとする生産調整が本当に自給力の上昇につながるのか、そこが問題の肝です。戦後の農政の流れが良くわかりました。コメ農家で家族経営であれば10ヘクタールが最適だとわかりました。備忘します。

日本農業の真実 (ちくま新書)

日本農業の真実 (ちくま新書)

食料全体を大局的に眺めれば、生産の減少した米や芋類を含めて、食生活の変化が食料自給率を引き下げた主たる要因であった。ページ40
問題の焦点は、働き盛りの農業従事者を要する部門、具体的には施設園芸や酪農の所得の低水準にあるといってよい。ページ49
食糧・農業・農村基本法の理念を一言で表す場合、価格政策から経営政策への転換である。ページ79
10ヘクタール程度の規模で稲作の効率化ベストの状態に達すると述べた。またこのレベルを超えた規模拡大はさほどコストダウンをもたらさないとも述べた。しかしながら現実には少数ながら家族経営でも30ヘクタール、40ヘクタールの規模の水田作が存在する。法人の場合には100ヘクタール200ヘクタールの経もの展開している矛盾するように見えるこの現象については、次のように解することができる。すなわち法人経営であれば、かなりの数の常雇いの人材を要しており、作業機械も複数セット保有する形がとられている。 ページ107
最後の農地改革の名残であった自作農主義の条文、すなわち「農地はその耕作者自らが所有することが最も適当であると」する表現も2009年の改正で姿を消した。ページ153
特に重要なのは、農地の面的な集約のための調整である。面的にまとまっているか否かで、農地の利用効率には大きな違いが生まれる。権利移転をそのまま積み重ねるだけでは、農地の合理的な利用が約束されているわけではない。ページ155
経営形態はどうであれ、職業として農業に本気で取り組んでいる農業を支援することが何よりも大切である。「担い手」政策である。けれども同時に必要なことは卵やヒナの段階から「担い手」を育て上げるための仕組みである。ページ168
人材を惹きつけるために大切な点を筆者なりに表現するならば、経営の厚みを増すことである。もちろん、土地利用型農業であるから、職業としての農業経営にある程度の面積が必要である。水田農業の家族系であれば、10ヘクタール、20ヘクタールといった規模が標準的で当たり前の存在となることに、農業政策のターゲットことをも推奨したい。ページ170
消費者を知り、マーケットの動きを十分に把握する。これが現代の農業生産と農産物流通に携わる人材求められている基本線である。こうした基本姿勢は農産物の輸出についても貫かなければならない。政府は側面支援に徹すべきと述べたゆえんである。…農産物は絶対的な必需品であり、高度に選択的な商品でもある点に現代の食料の特質がある。ページ187