逆境を越えてゆく者へ

「逆境を越えてゆく者へ」を読みました。「われ太平洋の橋とならん」新渡戸稲造のアンソロジーです。樋口一葉の5千円札の前は新渡戸稲造の肖像でした。米国で出版された「武士道」は日本のよき紹介になり、米国との橋渡しの役割を果たしました。その偉人の本を初めて読んでみました。「わかりやすい!」「その通り!」という印象です。逆境も順境も表裏一体で、心の持ちようで大差ないことを説いています。勇気づけられる言葉が各処にちりばめられていて元気の出る本です。面白いエピソードもいくつかありましたが、「菜根譚」の引用がいくつもあり。読むべき本であることがわかりました。備忘します。

運命を拓きゆく者へ

運命を拓きゆく者へ

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自分がこんなに努力しているのに、社会はなぜ自分を虐待するのか、まず自分を受け入れないのか、ということ言葉はよく耳にする。だが、社会はけっして虐待しない。自分が虐待されるに値する人間なのである。ページ30
全力で努力するものは、遅かれ早かれ逆境から浮かび上がる。重荷を背負ってこれに耐えるものは、世間が必ずどこかでこれを認め、すぐに認める人がいなくても、いつか必ず認められるし、生きてる間に認められなければ、死後には必ず認められ、人によっては神のように崇められる場合さえある。ページ38
僕が以前とても人の世話を良くする先輩に、「人を世話する種をまくと、恨みを収穫することを覚悟すべきですね」と話すと、この先輩は、「まさに至言である」と手を打って同意された。ページ47
自分1人の狭い小さな経験を基準にしてすべてを判断する。これは逆境に陥ったものが大いに警戒しなければならないことである。ページ58
「語るなと人に語ればその人は、また語るなと語る世の中」と言われるとおり、相手構わず打ち明けていると、それが伝わり伝わりしていくうちにますます真相から遠ざかり、かえって自分の心の傷を増やすことになりかねない。ページ68
逆境にあったときは、これはどういうものか、どの位の大きさであるか、何年続くものかを冷静に分析的に考えるのがよい。そのように考えるだけで逆境からの苦しみを半分以上以下にすることができる。ページ86
人は他人が自分のためにしてくれたことを安く見積もり、自分が他人にしたことは過大
に計算したがるものである。功績を自分に帰し、恩を安く見積もりたがるのだ。ページ97
習慣は、天性を作ると言われるように、毎日幾度と無く志に注意を向ければそれが習い性となり、それがすなわち志を継続させることになる。最も必要なことは、常に志を忘れないように心にかけて記憶することである。ページ123
日本人は今日あって明日は無いかもしれないという消極的思想持つが、西洋人は今日あるから明日もあるという積極的思想で計画し準備をする。もし個人が今日あって明日はしれないというのならば、国家もまた同じであろう。また今日終わって明日あるかわからない国ならば、何もなすことはなくなってしまう。ページ156
明日の命はわからない、などと言って体を乱用して病気なれば、死ぬこともできず一人前の仕事もできず、自分も辛いし他人にも迷惑をかける。ページ168
縁起のよくないことだが、人はあらかじめ負けるときの考えを用意しておかなければならない。この考えがあれば勝ったときには慎重になるし、負けたときにもみすぼらしい姿にはならない。ページ203
物質的利益を超脱し、名誉、地位、得失に淡々とすることができれば、世間で行われている勝敗は子供の遊びに過ぎなくなる。本当の勝利者は自分に克つもので、私心をなくすことが必勝の条件である。ページ213