農業のマーケティング教科書

「農業のマーケティング教科書」を読みました。静岡県立大学の岩崎先生の著作です。私「ブランドづくりの教科書」いらいのファンです。本書も爽やかなマーケティング論です。豊富な調査と事例で腹に落ちます。経営改善ではなく経営革新をするべきだというのは至言です。「顧客創造」が経営の基本です。ドラッカーを読み直したくなりました。備忘します。

農業のマーケティング教科書 食と農のおいしいつなぎかた

農業のマーケティング教科書 食と農のおいしいつなぎかた

農や食に関する産業の相対的な地位が高い国は、幸福度の高い傾向にある。この2つの世界ランキングの類似性は単なる偶然だろうか。偶然というには一致度が高いような気もする。ページ23
農業は、単に農産物を生産するだけの仕事ではないということだ。人々の幸福の基礎となる、誇り高き仕事である。農業や農村の活性化は、農業分野だけにとどまらず、人々の幸福感にも結びつく。ページ28
農業農産物を作る農業に加えて、顧客を作る農業という視点が欠かせない時代が来ているのである。ページ39
生産者志向の人は「何を作るか」を考え、販売志向の人は「何を売るか」を考える。一方マーケティング志向の人々は、消費者が「なぜ買うのか」を考える。ページ48
「農産物を作る」と考えると、自ずと生産者目標になってしまう。発想を転換して、「顧客を作る」と考えよ。ページ50
今日のマーケティングは、視覚より味覚ではなく、視覚も味覚も大切なのである。ページ61
「高いから売れない」「安くすれば売れるはずだ」という発想は、短絡的だということだろう。顧客が求めるのは「安い価格」ではなく「高い価値」なのである。ページ79
業績にプラスの影響を及ぼしている変数は、「消費者と交流している、消費者の声を聞いている」「価格競争に巻き込まにくい」「安定的な販売先を確保できている」「シンボルとなる商品がある」「女性の力を積極的に活用してる」の5つであった。一方農業にマイナスの影響及ぼしている変数として、「農畜産物を収穫するところまでが、私の主な仕事である」が抽出された。ページ86
…販路について他人まかせにせず、生産者自身が直接的もしくは間接的に関与していくことが大切なのである。ページ92
顧客の多くが「…らしさ」を何ら何かしらの肯定的な言葉で表現することができれば、それはブランドである。分かりやすい例として地域ブランド取り上げよう。例えば京都北海道、埼玉、栃木いずれの地域にも素晴らしい地域資源があるがブランド力には大きな違いがある。京「都らしさ」「北海道らしさ」「埼玉らしさ」「栃木らしさ」。それぞれの「らしさ」を具体的な言葉にするとどうなるだろうか。ページ103
品質が低ければブランドにはならないが、品質が高いからといってブランドになるわけではないということだ。ページ110
これからの農業は、「善い悪い」だけの勝負ではなく「好き嫌い」の証でもある。消費者の心をとらえることができれば、「良い商品」が「好きな商品」に変わるはずだ。人の心に訴える農産物を作ろう。ページ117
昨今、全国で農産物を生産(1次産業)×加工(2次産業)×流通販売(3次産業)をかけ算した「6次産業」が盛んに進められている。ページ144
農業者の商品開発においては、加工食品業者と「土俵変える」ことが欠かせない。ページ149
第一に6次産業化に成功するための最も重要なポイントは、独自性である。具体的には以下のような項目から構成されている。「競合商品と比較して違いが明確である」「独自性がある商品である」「その商品は個性的である」 6次産業化に成功するためには消費者に伝わる冥界の特徴打ち出すことが欠かせないということだ。ページ152
6次産業化に成功するための第二の重要なポイントは、販売チャネルの確保である。…「販売ルートが確保されている」「安定的な販売先がある」「顧客ターゲットを明確に設定している」ページ153
…第3の重要なポイントは「高品質、安心安全」である。この因子は具体的な以下のような項目から構成されている・「味が良い商品である」「品質に自信を持っている」「安心安全な商品である」味と品質、安心安全は、6次産業化の土台になる要素である。ページ155
農産物のブランド化を強化するために、最も効果的で効率的な方法は。産地にきてもらい、そこでおいしい農産物を食べてもらうことだろう。ページ171
農家は農業のプロである。外的要因を嘆くのはやめよう。それでは何も変わらない。時間だけが過ぎていく。内的要因に目を向け自らが変わるほうがずっと生産的だろう。ページ197
…自分自身に問いかけてみよう。「進化しているか」「深化しているか」「新化しているか」 前向きなチャレンジを続けている農業者ほど好業績を挙げている。失敗を恐れず行動しなければ、マーケティングの成果を得ることはできないということだ。ページ207