床ずれ博士の在宅介護

「床ずれ博士の在宅介護」を読みました。10年前の本です。褥瘡学会を立ち上げた日本の権威です。それまでの誤った治療法に異を唱え、褥瘡治療の原理原則を打ち立てました。最近の「褥瘡ガイドブック」「在宅・褥瘡予防・治療ガイドブック」によると、先生の主張通り、間違った治療法の訂正、新しい有効な治療法がいくつも載っていました。結果として褥瘡の著しい改善が報告されています。本書で、体圧分散マットレスの使用は必須で、マットレスが良くなければ治療はおぼつかないと喝破しています。備忘します。

床ずれ博士の在宅介護 (朝日新書 93)

床ずれ博士の在宅介護 (朝日新書 93)

車椅子やエアマットは、患者さんの体に直接触れるものです。もし体に合わないものを使った場合には、簡単に床ずれの原因になってしまいます。…床ずれを予防すること、あるいはできてしまった床ずれを治療していくことが、介護においては最も重要なポイントであると言っても過言ではありません。ページ44
介護職や看護師の適切なケアと体位交換、床ずれを作らないために優れた体圧分散マットレスの使用が必須条件なのです。また、栄養不足も床ずれにつながるので栄養管理をきちんと行うことも重要です。ページ107
傷口が開いた状態では、じゅくじゅくとした浸出液が出ます。消毒剤はこれに接するとすぐにその効果を失ってしまいます。消毒薬をつけても細菌は減少しません。むしろ、正常な働きをしている細胞まで破壊してしまうため、傷口を直そうとする働きをも止めてしまうのです。こうした傷の場合には、生理的食塩水や水道水で充分洗浄する方が、効果あります。そのあとで湿潤環境を保つための治療を行うのです。ページ116
床ずれは、基本的に何かが体と接触することで起きるものです。体に接触するものを、床ずれを起こしにくいものにすることが予防と治療に繋がることになります。例えば、寝たきりの患者さんにとっては、24時間ずっと体を密着させているのはベッドのマットレスです。マットレスがいいものでなければ、いくらいい治療や看護行っても床ずれは良くなりません。ページ126
ベッドと同様、患者さんの体にずっと接触しているのが車椅子です。車椅子も同じく、患者さんの体にあったものを選ぶべきです。患者さんの体の角度などを測りながら、体に合わせた形にできる高機能な車椅子(module type =調整型車椅子)も開発されていますので、体の状態を見ながらレンタルしていきましょう。ページ130
どんなに高齢であっても、最後までよりよい生活をしようと思ったら、やはり離床して自分で動けるようになることです。とはいえ、寝たきりに近いお年寄りを無理に歩かせ、運動続けさせてもらおうとしても、それは極めて難しいことです。特に目的もなく、ただ「やりなさい」と無理強いするようでは長続きしません。それどころかお年寄りに嫌がられ、そっぽを向かれてしまうことさえあるでしょう。お年寄り自身に生きたいいという気持ちを持って努力してもらうことは、なかなか難しいものです。確固たる宗教を持ってる人、あるいは信念を持っている人は良いのですが、日本人では少数派です。ページ212