乳酸菌とビフィズス菌のサイエンス

「乳酸菌とビフィズス菌のサイエンス」を読みました。仕事上の読書です。乳酸菌を研究してる方から、基礎資料として紹介されました。京都大学の出版A4版ページの大著です。論文集に近い構成です。難儀しました! でも、若い頃に、医薬品プロパー(MR)研修で学んだことがたいへん役に立ちました。表面的には理解できました。(?)今、世界中が目に見えないウイルスに悩まされていますが、目に見えない乳酸菌やビフィズス菌がヒトに役立っていることを再認識しました。研究者によれば、乳酸菌の作用機作は仮説が多く、わからないことが多いとの意見が多く、これからの研究分野であることがよくわかりました。前職の会社に所属している研究者が編集担当者として4名、名を連ねていますが、面識はありません、残念でした。備忘します。

乳酸菌とビフィズス菌のサイエンス

乳酸菌とビフィズス菌のサイエンス

  • 発売日: 2010/12/07
  • メディア: 単行本

機能性食品は日本が世界に先駆けて提唱した概念で、食品の機能性を認識させたものであり、ヨーロッパなどに大きな影響及ぼして、プロバイオテックスなどの概念の基礎になったものである。その定義は「生体の調整によって生活習慣病のリスクを軽減し、健康寿命伸ばすことに役立つ補助食品」とされているが、乳酸菌の人への効果を念頭に置いた乳酸菌飲料や乳製品はこの範疇に含まれるものとして注目された。ページ3
乳酸菌及び乳酸菌が生産する物質の産業利用への将来的な期待も大きい。発酵食品のスターターとして、あるいは食品添加物としても用途のほかに、…工業生産、抗菌活性の利用など、その用途拡大も期待される。さらに乳酸菌の外来ワクチン遺伝子の運搬大としての利用の研究も進められており、新しい乳酸菌の利用法として注目されている。ページ6
乳酸菌は乳酸を多量に作る細菌を意味し、慣用的な呼び名であって、分類学上の呼び名ではない。細菌の仲間は現在、数百の属に分類されている。その中で複数の属が乳酸菌の仲間である。ページ7
乳酸菌は炭水化物を含む有機培養基によく繁殖し、発酵生産物として、主として乳酸を作る細菌を指す。…そして真の乳酸菌を決定する項目を重要な順に列記している…①グラム染色、②形態(桿菌または球菌)③カタラーゼ反応、④発酵形式、の順であるページ8
穀類の発行(生主の素、ウイスキー酵母パンの生地など)は酵母によるアルコール発酵が主目的である。ページ14
人の腸内には1000種類以上、約100兆個の細菌が複雑な生態系を形成し、生体内の代謝、ビタミンの生産、免疫力の活性化、病原菌の腸管内での増殖など多くの重要な役割を担っている。特に、ビフィズス菌は腸内フローラの主要構成菌群の1つであり、宿主の健康維持に大きく関わっている細菌であることが明らかになっており、今日ではプロバイオティクスとして広く利用されている。ページ80
母乳乳幼児では早期に腸管内のビフィズス菌の定着が見られ、ほぼビフィズス菌のみに占められた腸内細菌層を形成する。ページ104
乳酸菌の多くは複雑な栄養要求性を示し、合成培地に生育させる場合には、多くのアミノ酸、ビタミン、核酸、金属塩等の添加を必要とする。ページ184
ヨーロッパを中心とした各地域で独自の製造法が発展し、それぞれの風土に応じた多種多様のチーズが製造されるようになった。使用される微生物も様々で、ほとんどのチーズで乳酸菌が使用されるが、チーズの種類によっては乳酸菌に加えて他の細菌、カビ、酵母なども使用される。ページ375
チーズ製造における乳酸菌スターターの役割は大きく2つある。1つ目は酸を醸成して乳の凝固を促進させることである。これは乳酸菌以外の微生物では代替えできない重要な役割である。… 2つ目の役割は、乳成分の代謝により、味成分や香気成分を生成して風味を作ることである。ページ376
発酵ソーセージの原料には衛生的に処理された鮮度のよい肉を選別して使用するが、食中毒菌による汚染の危険性がある。ほとんどの食中毒菌は発酵ソーセージに添加される食塩、亜硝酸塩、あるいは発酵中の乳酸菌の増殖によるpH低下、乳酸、酢酸、プロピオン酸などの有機酸、過酸化水素二酸化炭素、ジアセチル、あるいはロイテリンなどの低分子抗菌物質の生成、あるいはバクテリオシンなどの抗菌物質によって生育が阻止される。ページ392
漬物の野菜の葉、茎、音、果実などが食塩とともに桶などの密閉容器の中で重石をして漬けけ込まれる。食塩はその浸透圧で野菜の細胞から栄養に富んだ栄養分を水分とともに浸出させる。…これらの微生物の発酵により蓄積をした乳酸やアルコールは漬物に酸味や香りを与える。さらqに発酵で蓄積した乳酸は食塩とともに腐敗菌の増殖を抑え、漬物の保存性を良くする。ページ397
東南アジアから中央アジアにかけての地域に見られる伝統的なアルコール飲料を作るためにスターターとして餅麹が用いられる。国によって呼び名が異なるが製法は同じである。すなわち生の米あるいはそばなどの雑穀の粉を水で練り、餅の形態にし、すでにある餅麹の粉をまぶして製造される。ページ398
わが国で一般的なホワイトブレッド(食パンや菓子パン等)は、培養された酵母菌がスターターとして用いられ生地発酵が行われる。したがって乳酸菌の関与する余地はないと考えられていたが、…いずれの酵母菌体製品にも相当数の乳酸菌が存在することを認め、ホワイトブレッドの生地発酵にも乳酸菌が介在していることを明らかにした。ページ401
清酒醸造の特徴の1つに、開放状態で発酵が行われることが挙げられる。この方法は、有害な細菌や野生酵母による汚染に常にさらされており、発酵が正常に進行しないという危険性が高いが、実際は酒母において乳酸酸性下で大量の有料清酒酵母を用いることによって、良質の清酒を安定して醸造している。この乳酸の働きは酒母のpHを下げ、有害な細菌や野生酵母の生育を抑制する働きが他の有機酸に比べて優れており、蒸米の糖化を阻害することが少ないと言う利点に因っている。ページ402
乳酸菌のウィスキーに対する品質への寄与は、①pHを下げ、蒸留時の不快な香りの溜液への移行を防ぐこと、②ウイスキー中の揮発性香気成分に好ましい影響及ぼすとの報告があり、乳酸菌はウイスキーの品質形成に重要な役割を担っている。ページ408
発酵食品や腸管に由来する各種微生物の中で、人や動物の健康に役立つものはプロバイオティクスと呼ばれる。プロバイオティクスと言う言葉は、抗生物質が病原菌、有害金を直接殺すのに対し、マイルドの作用で、有用菌が有害菌を抑えることをイメージして名付けられた。また腸内の有用菌を増やす働きを持つオリゴ糖などはプレバイオテクスと呼ばれている。抗生物質が耐性菌の出現などで問題を抱えている中で、新たな手段として注目を集めている。ページ495
プロバイオティクスとしての乳酸菌は、発癌予防や抑制効果にも役立つことが多くの研究で示されている。乳酸菌の抗ガン作用及び関与メカニズムは不明な点が多いが、乳酸菌は発癌に深く関与している環境及び食品由来変異元物質に直接作用し、これらの物質の毒性を低減し、がんの治療及び予防に役立つことが考えられている。。ページ534