エネルギーから経済を考える

「エネルギーから経済を考える-実践編」を読みました。小山田さん(小田原かなごてファーム代表)から献本いただきました。小田原市の商工会議所会頭、鈴木氏の著作です。鈴木氏は、かもぼこ「鈴廣」の副社長でもあります。東日本大震災直後から世を憂いてエネルギー問題に取り組んでいたそうです。さらに今に至るまで活動を継続していることに敬意を表します。対談のなかで「地方創生」の欠陥をみごとに指摘しています。「観光振興や人口増活動をしても地域間競争を煽るだけ、エネルギー問題の解決こそ根本的な解決につながる」と主張しておられます。「限界費用ゼロの時代」の結論と同じです。備忘します。

エネルギーから経済を考える SDGs実践編

エネルギーから経済を考える SDGs実践編

地域でお金を回すと言う点から見ると、エネルギーはとても大事であり、地域経済へのインパクトが大きいことに気がつきます。ページ20
その視点で見ると、エネルギーの地産地消は、すごく優れた地域経済活性策である事に気がつきます。自分の地域で生み出したエネルギーを自分の地域内で使う事は、地域間競争を生みません。それぞれの地域がすべての地域でwin winの関係が作れます。さらなる効果として、再生可能エネルギーの導入により、化石燃料の比率を下げることで、気候変動への対応、そして、脱炭素社会の実現に寄与できます。一石二鳥の地域経済活性化策だと思います。ページ27
SDGsに書かれている事は、世界中の問題の百科事典でもあるのです。どんな企業でも何かしら課題や問題があるでしょう。その課題解決のプロセスにSDGsのを取り入れることで、思わぬ方法が見つかるでしょう。ページ48
商工会議所の会頭をやっていて気がついたのですが、日本の地方自治体が注力している2つのことがあるんです。1つは、観光振興ですね。確かに、インバウンドが増えて観光振興による経済効果は大きいでしょう。ただ冷静に考えると観光振興は地域間競争になることを避けられない面があります。もう一つが、人口を増やそうと言う取り組みです。でも、日本全体が人口減少のフェーズに入っているのですから、自分の自治体の人口増やそうとすればどこからか引き抜いてくるしかないわけで、まさしく地域間競争そのものになってしまいます。でも、エネルギーの地産地消を促進するのは、地域間競争とは無縁なのです。ページ66
化石燃料を使わず、どうやってビニールハウスの温度調整を行うのでしょうか。冬の対策してとして考えたのは、温泉熱の利用です。北海道には、道路が凍らないよう、地面に埋めたパイプにお湯を巡らせて雪を溶かすロードヒーティングと言うシステムがあります。中川さんは、マンゴー植えた土の中にこれと同じシステムを作り、温泉を流して土の温度が保たれるようにしました。ページ109
中川さんは、自然エネルギーをとことん使い尽くすカスケード農業を提案しています。カスケードとは階段状のことで、いちど使った資源を捨てるのではなく、階段に応じて利用し尽くすことを意味しています。ページ116
まずは収益性を見極める。自分たちができる事は全てやり、継続性を重視して地域への技術定着を支援、主導権とメリットは地域が受け取るデザインを作り上げ、足りない力は様々な提携を広げたプラットフォームがどの枠組みを構築していく。ページ143
「地方創生」とかいって騒ぐ必要ないんですよ。電気の売り上げが地方に入れば一発で変わるんだから。ページ171
太陽光発電パネルと太陽熱温水器を設置して、比較した結果、同じ面積であれば太陽熱利用で得られるエネルギーは太陽光エ発電で得られるネルギーより、およそ3.5倍も効率が良いことが実証できたのです。ページ216
…経済とは人の営みであり、そして生物は皆、外部からエネルギー(カロリー)を摂取し、生殖によって世代を継ぐことで存続している。これはバクテリアでも杉でも、ライオンでも人でも全く同じことだ。エネルギーと生殖なき限り生物はなく、もちろん経済もない。ページ257
…エネルギー源と人口の変化に着目することで、人類のこれまでの歴史は3段階に区分けすることができる。①狩猟採集期②農業生、②農業期、③化石燃料期。そしてその次に、いかにして④再生可能エネルギー期を確立するかが、今の人類共通の課題なのである。ページ258
この4つの問題を解決する方法は何か? 化石燃料が無限に使えることを当然の前提に構築されてきた、現在の産業と生活の様式を修正し、化石燃料の使用量を減らしていくことしかないのである。「エネルギーから経済を考える」事は、同時に「エネルギーから人間のあり方を考え直す」ことでもある。ページ265