仕事の裏切り

「仕事の裏切り」を読みました。今まで普通に考えてきた経営手法が誤っていたのかもしれないと気づきました。マズローの欲求説やマクレガーのY理論は、従業員たちを気持ちよく働かせることによって、成果をあげるための方便にすぎなかったのではないか? 本当に働いている人のためではないのではないかと反省しました。「社員を不当に安い給料で働かせるために仕事をより楽しいものにするのは搾取と変わらない。」痛い意見です。よっぼどテーラーの科学的管理法の方が率直で、正直な管理法であったのかもしれません。「生き方」を経営が関与するのは僭越なことかもしれません。備忘します。

科学的管理法を構成する、以下の4つの基本要素は、雇用者と被雇用者との関係を大きく変えた。まず第一に、科学的管理法は中央集権的な計画と、作業工程の整備に基づいていた。第二に…それぞれの業績を最も単純なパーツに分解した。第3に…この管理法は、管理者が労働者を訓練し、彼の成績を注意深く監視することを必要とした。第四に、仕事の構造だけでなく、労働者の価値観を変えなくてはならないと考えていた。ページ178
レスリバーガーとメイヨーがホーソン研究所について後に語っていることを比べてみると、興味深いものがある。メイヨーは人を単純で影響されやすい存在であるとみなしていたのに対し、レスリバーガーは、すべての人が持つ個性に着目した。ページ189
X理論と呼ばれた経営方法は権威主義的で、テイラーと同じ労働者観に基づいていた。つまり、労働者は元来怠け者で、向上心がなく、物質的報酬と懲罰にだけ反応し、雇用の安定を望むものの、責任は取りたがらない。Y理論と呼ばれた経営方法は、参加型で、労働者は仕事をするのが好きであり、内的動機を持っていて、自己管理でき、自分の仕事に責任を持ちたがる、ということを前提にしている。マクレガーページ210
マズロー)人々を仕事に駆り立ててきたのは、最も低次元で、最も強力な生理的な欲求である。企業は、従業員の生理的欲求を満たす手段を提供した上で、帰属や自尊心や自己実現といったその他の欲求に焦点を合わせる。ページ212
人は欲求ではなく価値観で仕事を選ぶと述べたのはこうした理由からだ。私たちは自分の信じることを選べるが、自分が必要なものに関しては選択の余地は無い。ピラミッド通りの要求の優先順位を持たない従業員は、マネージャーを最も悩ませる悪魔のような存在である。彼らは組織が与えるべきもの、例えば帰属や名声等を必要としていないからだ。…ページ213
…トータルクオリティーマネジメントTQMほど熱烈に迎えられたものも珍しい。その理由はおそらく、人はTQMの基本原則を赤ん坊の時に叩き込まれているからだろう。最初が肝心なのですよと言うこと。その意味するところは、品質管理は製造工程の最後で行うのではなく、全工程を通じて行うべきであると言うことだ。TQMはまた、お客様はいつでも正しいというビジネスの定番にも依拠していた。TQMはこの2つの原則を実現するために、科学的管理法以来の、実質的にすべての形について洞察を統合しようとした。ページ258
キャスリンライアンとダニエルオーストリッチは、職場における恐怖の研究で、人々は通常、仕返し、報復、復習を恐れていることを発見した。ページ265
「リエンジニアリングはより少人数でより少ない仕事をするだけのダウンサイジングとリストラクチャリングでもない」と言い張る。リエンジニアリングは彼に言わせれば「より少ない人数でより多くの仕事をすること」である。しかしどちらの例においても、「少ない人数で何かをやっているだけ」と言う論理的推論に対して反論できていない。リエンジニアリングは多様化した面白い仕事を約束してくれるが、結局それは仕事を持っている人に対してだけである。ページ269
競争力を維持するだけのために、一瞬で社員をクビにするような会社に忠誠心を持つのは馬鹿げたことである。忠誠心は一方的に持つものではない。ページ278
仕事を面白く、満足感を得られるようになものにすると言うこと自体は、高尚な目標である。しかし社員を不当に安い給料で働かせるために仕事をより楽しいものにするのは搾取と変わらない。ページ289
価値ある仕事人の仕事は人々に希望をもたらす。人間が経済を掌握し、経済に対して責任を持つと言う事、仕事における個人の努力が変化をもたらすと言うことを信じることができなければ、私たちが仕事について考える意味はほとんどない。ページ291
手当の大幅な削減、伸びる残業時間、増える仕事量、ダウンサイジング、そしてどこまでも上がるエグゼクティブたちの報酬に対する労働者たちの沈黙は不可解だ。ページ297
プロであることの意味を決定づける道徳的特徴は、時計ではなく、そこに対する献身である。ページ322
仕事は人間を高尚にしたり、疲弊させたり、裕福にしたりするが、人間を人間として完成させるのは余暇である。ページ342
彼らは強まる消費者の欲望、買い物がもたらす喜びに浸る。仕事、余暇、そして消費主義によって、私たちは悪循環を続けることになる。欲しいものを買うためにもっと働き、ものを買って、自由時間を過ごすことで、働いた分を埋め合わせようとする。ページ359
意味のある仕事とは一体何なんだろう。面白くて満足できる仕事のことだと言う人もいれば、社会に貢献する仕事のことだと言う人もいる。また、人生に意味を与えてくれる仕事であると考える人もいる。意味のある仕事の本質、そして意味のある仕事への欲求を探る時、最初に直面するのは、「人生の意味とは何か」と言う哲学における最も基本的な問いである。ページ365
意味のある仕事は自分自身が見つけなくてはならないものだ。それが何かは定義できなくても、見つけたときにはわかるものである。…意味のある仕事の最も顕著な特徴は、それが人生全体に活力を与えると言うことだ。…大事なのはいかにそうした活動するかであって、何をするかではない。ページ399
私は、現在の経営は、公正な職場を作るより、働く人間を気持ちよく感じさせることに重点を置いていると批判してきた。ページ402
ベンジャミンフランクリンが富に至るには分別と勤勉と11の徳を述べている。節度、沈黙、規律、不屈、誠意、正義、中庸、明瞭、冷静、貞淑、謙虚。古臭いし、国も違うと投げ捨てずに、時は金なりと言う彼の言葉、金銭が目的であるとすればそれは人生を楽しむ自由だと言う彼の意見と合わせて、自分に、また、周りの人に、これらの徳や格言が今ではどの程度当てはまらないか、それとも部分的に今でも当てはまるか。ページ438