学習する組織

「学習する組織」を読みました。示唆に富んだ名著ですが、分厚いので難儀でした。
経営はシステムであり「全体」なので、「分析」のみでは理解できません、むしろ組織を破壊することすらあります。本書は、このあたりまえの現実を「システム思考」で解決できると論じています。良い航海のために船長は何をするべきか?嵐に備えるとかではなく、よい船を設計することが根本的な解決だと言っています。もう一方で、ディシプリン(学習すること)を実践することの大切さを豊富な事例で力説しています。死ぬまで学習する勇気を与えてくれます。「自分の望みを叶えることはできない」という私の深層心情を打破する勇気です。備忘します。

ディシプリン(学習すること)を実践することは、一生涯学習者になることだ。目的地に到達することは決してない。生涯をかけてディシプリンを習得するのである。「私は見識ある人間である」とは言い切れないのと同様、「われわれは学習する組織である」と言い切ることは決してできない。学習すればするほど、自分の無知をより強く感じるようになるだろう。ページ45
真の学習は、「人間であるとはどういうことか」という意味の核心に踏み込むものだ。学習を通じて、私たちは自分自身を再形成する。学習を通じて、以前には決してできなかったことができるようになる。学習を通じて、私たちは世界の認識を新たにし、世界と自分との関係を捉え直す。学習を通じて、私たちは、自分の中にある創造する能力や、人生の生成プロセスの一部になる能力を伸ばす。私たち一人ひとりの中に、この種の学習に対する深い渇望があるのだ。ページ50
なぜ構造の説明が非常に重要かというと、それを持ってしか、挙動の根底にある原因に対処することができないからだ。構造が挙動を生み出すゆえに、根底にある構造を変えることで異なる挙動パタンを生み出すことができる。ページ104
良かれと思ってなされた解決策が実は長期的には状況を悪化させる、と言う挙動は、「問題のすり替わり」の構造によって説明することができる。対症療法的な解決策を選ぶ事は魅惑的である。明らかな改善が得られる。厄介な問題について何かをしなければならないという外的または内的な圧力が取り除かれる。だが問題の症状が和らぐと、同時に、より根本的な解決策を見つける必要性の認識が低くなる。一方、根底にある問題は対処がなされないままなので、悪化するだろう。さらに対症療法な解決策の副作用によって、根本的な解決策を適用することがいっそう難しくなる。やがて、人々は対症療法的な解決策にますます頼るようになり、一見したところ、それが唯一の解決策だと思い込む。意識的に決定する人が誰もおらず、人々は対症療法的な解決策への依存を高めることに「問題をすり替えて」しまうのだ。ページ167
「自己マスタリー」は、個人の成長と学習のディシプリンを指す表現である。高度な自己マスタリーに達した人は、人生において本当に自分が求めている結果を生み出す能力を絶えず伸ばしていく。学習する組織の精神は、こうした人々のたゆまぬ学びの探求から生まれるのだ。ページ194
自自己マスタリーがディシプリン-自分の人生に一体化させて取り組む活動-の1つになれば、2つの根本的な動きが具現化する。1つは自分にとって何が重要かを絶えず明確にすることだ。私たちを往々にして、道の途中で起こる問題に対処するのに多大な時間を費やすあまり、そもそもなぜその道いるのかを忘れてしまう。その結果、自分にとって何が本当に重要かがぼんやりとしか見えなくなる。ぼんやりどころか見誤ってしまうことさえある。もう一つは、どうすれば今の現実をもっとはっきりと見ることができるかを絶えず学ぶことだ。ページ195
私たちはほぼ全員が「自分の望みを叶えることはできない」という支配的な心情を持っているということだ。この心情はどこから来るのだろう? フリッツによれば、それは私たちの育てられ方のほとんど避けようのない副産物だという。ページ214
結局のところ、達人の特徴である潜在意識の疎通性を発達させる上で何よりも重要な事は、自分が望む結果を心から大切にする気持ち、つまり、それがめざすべき「正しい」目標であるという深い感情である。潜在意識は、特に心の一番奥深くにある志や価値観に沿った目標受け入れるようだ。ページ229
リーダーシップの中核戦略が単純明快だ。「模範たれ」につきる。自分自身の自己マスタリーに本気で取り組んで欲しい。自己マスタリーについて語ることで、多少は人の心を開かせることができるかもしれないが、常に「行動は言葉よりも雄弁」だ。他人に自己マスタリーを探求させたいのなら、まず自分が真剣にそうして見せることほど説得力のある事はない。ページ239
リーダー職の人々にとって何よりも重要な事は、自分のビジョンもやはり個人ビジョンなのだと言うことを忘れないことだ。リーダー職にあるからといって、自分の個人ビジョンが自動的に「組織のビジョン」になるわけではない。ページ293
経営理念とは3つの重要な問い「何を?」「なぜ?」「どのように?」に対する答えである…◆ビジョンは「何を?」に相当する。-自分たちが創造しようとしている未来のイメージである◆目的(あるいは「使命」)は「なぜ?」に相当する。「なぜ私たちは存在しているのか?」に対するその組織の答えである。優れた組織は株主や社員が必要とするものの供給を超越した、より大きな目的意識を持っており、独自の方法で世の中に貢献し、独特の価値の源泉を付加しようと努める。
◆基本的価値観は「ビジョン達成を目指す過程で、私たちはどのように、使命に矛盾せず、行動したいのか?」に対する答えである。企業の価値観は、高潔、開放性、正直、自由、機会の平等、無駄のなさ、メリット、忠誠などだろう。これらは、企業がビジョンを追求する傍ら、毎日をどう送りたいのかを表現するものである。ページ303
リーダーの設計の仕事がもたらす影響は広範に及ぶ可能性があるが、往々にして設計者の功績になる事はほとんどないことを心得ることが重要だ。だからこそ、船の設計者の仕事はリーダーシップとして認識されないのである。ページ474