遅刻してくれてありがとう

「遅刻してくれてありがとう」を読みました。”Thank You for Being Late” 遅刻してくれたおかげで考える時間ができたからだそうです。しゃれたネーミングです。さて本書は、上下2巻、約800ページの大部です。上巻は、「フラット化」する世界の現状分析です。ムーアの法則が大爆発を生み、世界が一変した姿を描いています。2007年のiPhoneFaceBookが分岐点であったことを詳しく説明しています。結果、テクノロジーとコミュニケーション技術の発展が世界を破壊するかもしれないと警鐘を鳴らしています。下巻は、その結果がもたらす具体的な世界変容の道筋を明らかにしています。最後に自分の育った地方都市のコミュニティの歴史と楽観的な意見の表明があります。
複雑化した世界中の問題を解決するには、ネットではなく、スマートな政治が必要だと痛感しました。備忘します。

ある時、相手の遅刻がちっとも気にならないことに、ふと気づいて、私は言った。「いややめてくれ、謝らないでほしい。それどころか遅刻してくれてありがとうなぜなら、あなたが遅れてきたおかげで、自分のための時間を作ることができたからだ」と私は説明した。ページ15
今では、すべての人間がビックデータビジネスに参加している少なくとも生き延びたいと思ってる会社は全て…それをやらないものは、5年以内に滅びると断言する。なぜなら、ビックデータを使って、分析、最適化、カスタマイズ、予見、自動化のためにAIを創出して得られるゆる差は、凄まじく大きいからだ。ページ108
私たちのクラウド基盤はオープンスタックと言うオープンソースソフトウェアを使って構築しています。コミュニティの力を活用するためです…コミュニティの他の人たちに自分の仕事の進化を認められたいと言う気持ちに、誰もが突き動かされているんです。…みんなフィードバックが欲しくてたまらないんです。ページ124
新しいことを全て要約するにあたって、今や複雑度から解放されましたと私に言った…それこそがインサイトだと私は思った。ページ163
創造者、スタートアップ企業の経営者、発明家、イノベーターになりたいのなら、今はうってつけだ。スーパーノヴァをテコに使えば、ほんの小さな力で大きなことができる。ページ174
Airbnbがにわかに急成長したのは、すべての複雑度をワンタッチにできたからだが、当事者が完全に信頼できるような仕組みでそれをやったからでもあった。ページ198
従来とは異なる価値観の源が、より強力になりつつあるのではないか? 知識のストックから知識のフローへと、その価値が転換しつつあると、私たちは確信している。もっと単純な言い方をすれば、フローがストックを打ちまかす。ページ231
現在のモバイルのスーパーノヴァは数多くのフローを創出し、それによって、これまでよりも多くの人々が貧困から抜け出し、世界最大の問題の解決に介入できるようになった。ページ283
多数の力の影響とは、そういうことだ。ムーアの法則とグローバリゼーションは、機械の力と、1人の力と、フローの力を大幅に拡大させた。だが、多くの手段の力を大幅に拡大してしまったために、人間は人類と地球の歴史始まって以来の膨大な数になり、それがスーパーノヴァによって強化されて、自然の時代勢力になり、自然に対する強制関数になった。ページ321
この政策の空白によって、アメリカや全世界の市民が、海で漂流してるような心地を味わい、極左か極右の候補者を多数が支持する結果になった。現在では、ブレーキをかけ、変化の力をハンマーで打ち砕くような人間を、あるいは不安を解消する単純な答えを聞かせてくれる人間を、多くの人が望んでるように見受けられる。ページ354
「仕事はなくならないが、良い仕事に必要とされるスキルが高くなっている」また、私たちはテクノロジーの新しいプラットフォームに乗っているので、何もかもがあっという間に進む。ページ367
ミドルクラスの仕事は急速に引き上げられ、高度化している-そういう仕事を完全にやるには、より高度な知識と教育が求められる。そういう仕事を完全にやるには読み、書き、算数だけでは不十分で、4つのC、創造性、共同作業、コミュニティ、コーディングが必要だ。ページ368
そして最後にあらゆる仕事が急速に引き下げられている。現在の形のままでは過去にアウトソーシングされるしかなく、あっという間に時代遅れになる。そのため起業家的な思考があらゆるレベルで必要とされる。利益を生み、雇用を創出するような、新しいニッチ、何かを始める新しいビジネスチャンスを、常に探さなければならない。ページ370

ソーシャルメディアは、意見の共有にはうってつけだが、共同で打ち立てるのには向かない。共同で破壊するのは得意だが、共同で建設するのは苦手かもしれない。フラッシュモブを集めるのには素晴らしい力を発揮するが、政党や憲法を基盤に素早く合意をまとめるのは上手ではない。下巻ページ51
インターネットは接続する能力を改善したが、政治組織、文化、リーダーシップの代わりにはならない。それに散発的な運動では、その3つの要素全てが弱い。ページ59
私たちのライバルである2つの超大国、ロシアと中国が現在の国際秩序に難題を突きつけていることも、無視するわけにはいかない。いずれも独裁主義国家なので無秩序や破壊者に対して脆弱ではない。下巻ページ79
無秩序の世界を安定させ、良識を育む拠点を拡大するためにアメリカができる最善の長期投資は、アメリカ風のリベラルアーツやテクノロジー教育を促進する、中東、アフリカ、中南米の学校や大学に、資金を注ぎ込んで強化することだ。下巻ページ84
加速の時代に安定を創出するには、ドローン、壁、空母、平和部隊のボランティア、鶏、緑地帯、ウェブと言うハイブリットの組み合わせが必要になるだろう。下巻ページ95
加速の時代にはいくつかの弱い国が破裂するはずだと論じた。一方、強い国では政治が内側に破裂してるように思える。つまり、国境は維持されているが、政党の崩壊が起きている。現在の形では、テクノロジーとグローバリゼーションと環境の3つが関連して同時に変化することに、首尾一貫して適切に対応できないからだ。下巻ページ101
現在の世界における政治の分断が「左派対右派ではなく、開放対閉鎖」であることを理解しているので、貿易、移民、グローバルなフローへの開放を選びそれを閉ざさないようにする。下巻ページ165
ドナルドトランプの政治の大部分は、象徴的なものです…それが象徴的なのは、人々が聞きたがっていることだと言う意味に於いてです。仮に実行されないとしても、ほとんど関係ない。なぜなら、トランプは何十年もの間アメリカ政治の底辺に追いやられていた彼の支持層の権利を高め、全米という舞台で脚光浴びるようにしたからです。…長年、自分たちには発言力がないと思っていたのに、急にそれを持てるようになったと言う感覚は強力です。たとえトランプが具体的に彼らを助けなかったとしても、トランプの対抗馬に投票するのは文化的利益に反するのです。下巻ページ378
強権を振るう男ではなく、強力なコミュニティーのみが、アメリカを再び偉大にする。そして、そういうコミュニティーが大数多くあり、さらに増えるはずだと言う事実が、私が今なお楽観主義でいられる理由なのだ。下巻ページ401