企業の意思決定のためのやさしい数学

「企業の意思決定のためのやさしい数学」を読みました。数学の本ではなく経営の本です。数式の理解は無視して、結論の部分だけ読みました。バブルの反省として金融工学が日本に導入去れ始めた時期の著作です。ROAデリバティブの一分野「オプション取引」について理解できました。株式を例にして非常に優しく説明しています。参考になりました。備忘します。

税引き後利益でなく、キャッシュフローをリターンとして利用するのには、もう一つ大きな理由があります。利益は会計基準の変更によって変えることができますが、キャッシュフロー会計基準をどのように変更しようとも変えることはできません。ページ21
売上高がいくらあったかは、収益を考える際には重要ではありません。では企業が使った資金の額はどこでわかるでしょうか。これは企業の総資産額に他なりません。つまり、企業の収益力を図る場合には、使っている総資産額に対するリターンを見る必要があります。ページ24
事業に伴うリスクには次のようなものがあります。販売量は予想通りか、販売価格は予想通りか、原材料費は予想通りか、製品の質は大丈夫か、製品を陳腐化させる新技術出現の可能性はないか。プロジェクトごとにリスクの大きさを考え、必要とするIRRを明確にすることが必要とされます。また、それぞれのリスクが、キャッシュフローにどのような影響与えるかを考えた上で、キャッシュフローを予測する必要もあります。ページ69
社債の利率以上の収益があれば充分と判断し、企業は財テクを行ったのでしょうが、これは「資金調達コスト」と「資本コスト」に関して勘違いがあったと言うことです。ページ83
企業が必要とする株主資本に対する収益率は、配当ができるレベルではなく、株主が要求するであろう収益率(資本コスト)になる。この計算はハイリスクハイリターンの考えに基づいて行われる。ページ120
オプションとは資産を将来購入する、あるいは売却する権利です。ページ131
企業の目的は、企業価値と株主価値を向上させるためにあると言って良いでしょう。いかに企業の価値を向上されるかが求められています。そのために数学が必要になるわけです。ページ163
企業価値=フリーキャッシュフロー÷(資本コスト−成長率)
この式は、企業価値を高めるためには、①フリーキャッシュフローを増やす、②資本コストを下げる、③成長率を上げる、このうちのいずれか、あるいは全てを実現する必要があることを意味しています。ページ178