日本の夜の公共圏

「日本の夜の公共圏」を読みました。副題は「スナック研究序説」です。東京大学出身の学者連が真面目に議論しています。滑稽な感じもします。私事ですが、転勤の各地でスナックのお世話になりました。憂さ晴らしをしました。土浦、甲府学芸大学、川崎、函館のお店のママにはわがままをしました。実際、スナックで知り合った人のお陰で人生の道筋も変わりました。今の若者がこのような「夜の社交場」を知らないのは勿体ないです。つかずはなれずの関係がスナックの本質であることを改めて理解しました。備忘します。

日本の夜の公共圏:スナック研究序説

日本の夜の公共圏:スナック研究序説

…人口あたりの件数となると様相が一変することとなる。大人口比でのスナック件数は、上から順に、①宮崎県、②青森県、③沖縄県、④長崎県、⑤高知県、、⑥大分県、⑦鳥取県、⑧秋田県、⑨山口県、⑩佐賀県となっている。九州方面スナックが多く、また西高東低の傾向が強いことが見て取れるだろう。ページ17
議論好きの高慢な人々を意味嫌い、柔らかで色好みの通を称揚する態度こそがそこにはある。これこそが夜の巷に遊ぶスナック紳士のプロトタイプとでも言うべきものだろう。ページ20
燦然たる「理性」一辺倒ではない、夜の帳の中での密やかな「公共軒圏/公共性」の可能性が、スナックの中にはあるのではないか、それこそが夜の公共圏と言う言葉を冠した本書を持って編者が示そうと試みたものである。ページ22
…奥さんと2人で行ける店とか女の人が気楽に入れる店は大体フレンドリーなんです。ページ30
店舗の名前は実は資料があって1番多いのは「さくら」って店らしいですよ、次が「あい」で、その次が「はな」。「ライムライト」は119件です。ページ32
どうも創世記のスナックは、新しい風俗であり、また様々な類型があったため、物語性を描いた抽象的な空間として捉えられていたらしい。ページ181
…束の間に席を並べた人同士が語り合い、ひとときを共にした後は、別々に帰っていく。そうした社交の魅力がスナックの特性である。ページ182
いわゆる郊外のベッドタウンのような地域にはスナックはあまりなく、昼間、住民が他の街に出て行かない街にはスナックが多いという傾向が見受けられる。後者には2つのパターンがあり、1つは大都市で昼間は住民だけでなく、他の地域からも通勤、通学で多くの人が流入する街であり、もう一つのパターンは、第一次産業を中心とする町村である。…どちらかと言うと財政的に厳しい地域にスナックが多いということである。…スナックの多い地域は相対的に財政が厳しい傾向にあるため公共施設の数が少ないこと自体は当然考えられることである。重要なのは、いわば「昼の社交場」ともいえるこうした施設の少ない地域に「夜の社交場」であるスナックが多く立地しているということである。ページ196
…スナックの件数が多い地域ほど刑法犯罪認知件数が少ない。具体的には他の条件が一定の時に、スナックが10軒多い地域の刑法犯罪認知件数は他の地域と比較して約46軒少ないのである。第二にスナックが認知件数に与える影響は、その地域の夜間光量によって変動する。明るいエリアにあるスナックよりも、暗いエリアにあるスナックの方が刑法犯認知件数に与える影響が大きくなるのだ。ページ199
分析の結果から、昼の図書館、そして夜のスナックと言う2つの社交の場は、地理的にはいわば相互補完的に立地しており、どちらも公共圏とされる。ページ201