パンセ

 パスカル「パンセ」をNHKオンデマンドの「百分で名著」で観ました。「パンセ」は、断章なので順を追って読む必要はなく、たまたま開いたページを読むので十分だそうです。テレビ番組ですので、たくさんのフィルターを通っています。ピックアップが恣意的であることを覚悟で視聴しました。
 「どうせ、そんなもんさ」「どうだ、凄いだろう!」は思考停止の状態です。相手の立場や、全体から見た場合など視点を変え、直感を混えて、考え続けることが大切だと痛感しました。成果を求めて、考えると疲れます、途中で投げ出すことが度々です。パスカルはそんな人間の弱さを見通しています。仕事が未完成で、結果がでなくても、その過程で考え続けることに意味があると大いに励まされました。
 「人間は一本の葦にすぎない。自然の中で最も弱いもののひとつである。しかし、それは考える葦なのだ。人間を潰すためには、全宇宙が武装をすることはない、一滴の水でさえ人間を殺すに足りる。しかしたとえ宇宙が、人間を押しつぶしたとしても、人間は宇宙よりも気高いと言える。なぜなら人間は自分が死ぬことを、宇宙の方が自分よりはるかに有利であることを知っているからだ。宇宙はこうしたことを何も知らない。だから、私たちの尊厳は、すべてこれ、考えることの中にある。私たちは、考えるというところから立ち上がらなければならないのだ。故に、よく考えるよう努力しよう。ここに道徳の心理があるのだ。」
【要約】
生きていると「選択」に迫られることがありますが、それは「偶然によって左右される」と身も蓋もない言葉を残しています。職業選択であれば「習慣」(環境)が職業をつくるので、誰でも、どの職業にも向いています。一生懸命、忙しくしていれば、適職になります。家で、何もしないで、じっとしているのが一番良くありません。「我々の本性は運動の中にある。完全な静止は死である。」と。
「自己愛の本質とは、自分しか愛さず、自分しか尊敬しないことだ。」人間は、自分の虚栄を満たすために自分の欠点を覆い隠そうと全力を尽くします。さらに、「褒められたい」「認められたい」というのが本性です。読書やブログ、SNS発信も「褒められたい」「認められたい」に根ざしています。でも、その虚栄心が、人間の成長や社会の発展の原動力になっているのも事実です。
私たちの不幸の原因は。私たちの宿命である「死」に対抗することができないことです。死を運命づけられた人間の固有の不幸です。趣味や賭け事や会話に耽るのは、不安で、ただ家にじっとしていられないからです。何かに熱中するしか解決方法はありませんが、「考えること」に熱中するのがいちばん良いです。「人間と言うものは、どう見ても考えるために作られている。人間の価値の全て、その義務の全ては正しく考えることにある。」
デカルトパスカルとは、真逆の考え方です。すなわち、①人間の理性は、万能である⇔限界がある、②世の中は、全てに原因と結果がある⇔偶然により左右される、③迷ったら、データ重視⇔ときには直感、と両者は考えました。現代は、デカルトの思想で発展してきましたが、パスカルの思想が必要な時代になったのではないか、人間は理性で割り切れません。「人は皆変わる。過去の自分は、もはや同じ人間ではない」未完成でも考えて続けることにこそ意味があることです。

パスカル「パンセ」第1回 人生は選択の連続だ
人生に選択がつきものだ。ではその選択はきちんとしたものだろうか。企業の就職人気ランキングは時代とともに変わるが、それは社会の空気によるともいえる。パスカルは人間の判断は環境や習慣などの外的要因に大きく左右されるとした。また人間の願望には限りがなく、常にこの選択で良いのかと悩み続けるとも記した。流されやすく欲深い…それが人間の本性なのだ。第1回では、思考にはどんな弱点があるのかを考える。
パスカル「パンセ」第2回もっと誰かに褒められたい
人間の願望は自己愛に源を発している。自分を認めて欲しいと言う思いが、生きる原動力になっている。しかし自己愛は、ときには自慢や嫉妬、羨望を生んでしまう。また人間は、自己愛によって現実をきちんと直視できないことが多い。耳の痛い真実は、身分の上下に関係なく、あらゆる人を傷つけるからだ。パスカルは、人間の考える事は常に自己愛によって、歪んでいるとした。第2回では、人間の自己愛ついて解き明かしていく。
パスカル「パンセ」第3回 生きるのが辛いのは何故か?
趣味もなく仕事もない状態で部屋に閉じこもっていると、気分が沈んでいくだろう。人間は考えることをやめることができない。だから何もしないでいると思考が空回りして、かえって苦しむのだ。パスカルは、人間は何かに熱中していないと生きられないとした。そして人間が何かに熱中するのは、やがて訪れる死の恐怖から目をそらし、死を忘れるためだとパスカルは述べた。第3回では、私とは何か、生きるのが辛いのはなぜかを考える。
パスカル「パンセ」第4回 人間は考える葦である
最終回はゲストとして分子生物学者の福岡伸一さんを招く。福岡さんはこれまで科学の限界を痛感してきた。世界には複雑な要素があまりにも多く、すべての因果関係を突き止める事は不可能ともいえるからだ。「パスカルは”人間にはわからないことがある”という事実を前に、人間のおごりを戒めた」と福岡さんは言う。原発事故など人間の理性の落とし穴が明らかになった今、私たちが忘れてはならない事は何なのかを語り合う。