ペストの記憶

 デフォー「ペストの記憶」をNHKオンデマンドの「百分で名著」で、視聴しました。昨年、コロナ禍がはじまったときに、カミュの「ペスト」を読みました。そして今回、デフォー「ペストの記憶」で、ロンドンでのペスト蔓延の顛末を知りました。1685年、飲食店の自粛要請や、宴会の禁止、住民封鎖もに実際に行われていました。今と同じです。また波状的に感染拡大と縮小を繰り返す事象に一喜一憂するマスコミや私たちの心理状況も克明に描いています。コロナが終息した後どうなるのか?示唆に富んだ内容でした。
今回のパンデミックを記録だけでなく、人類の記憶に残し、未曾有の災禍に対する免疫を次世代に伝える必要があると思いました。備忘します。

デフォー「ペストの記憶」①パンデミックにどう向き合うか
デフォーは「ペストの記憶」の中で、疫病が流行している時、どのような心構えが必要かについて入念に記している。デフォーはベストを肉体的な病気として見るのではなく、その精神的な影響にも注目していたのだ。その認識は、作品の各所で描かれ、この作品の文学的な価値を高めている。第一回は、パンデミックの前に、人はどのように精神の健康を保つことができるのだろうか。生作品を読み解きながら考える。
デフォー「ペストの記憶」②生命が生計か?究極の選択
「ペストの記憶」の冒頭で語り手のH.F.はベストを逃れるために田舎に疎開するべきか、商売のためにロンドンに残るべきか悩む。他にも疫病の蔓延を防ぐことと、経済活動を維持することの矛盾は、本書の至るところに見て取れる。それらの描写は、まさに新型コロナウィルス禍の中で世界中の人々が直面している問題と重なる。第二回は、パンデミックの最中で人間はどうやったら、生命の安全と経済を両立できるのかを考える。
デフォー「ペストの記憶」③市民の自由
「ペストの記憶」で主人公は、ロンドンの両政府がいかに手際良くベストに対処したかを褒める一方、感染を出した家屋の封じ込めや、ロンドンからの逃亡者への厳しい措置が生んだ悲劇も記されている。その上で、行政が市民の体を管理する、と言う近代的な政治のあり方について鋭く問いかける。第3回は、パンデミックに対して、行政府の政策はどこまで有効で、どのような問題をはらんでいるのかを考える。
デフォー「ペストの記憶」④記録すること、記憶すること
ペストの記憶」は実際にあったベスト流行について、リアルに再現した記録文学であるが、同時にフィクションとしての魅力も備えている。デフォーは、どうしてこのような形で記録したのか。そこには後世の人々の記憶に残るように事件を記録する方法を考え抜いたデフォーの思いが込められている。第4回は、パンデミックなどの大災害についていかに記録し記憶すべきなのかを、作品全体を通した作者の筆致から考える。