中古典のすすめ

「中古典のすすめ」を読みました。「中古典」とは、斉藤美奈子さんの造語で、「古典未満の中途半端に古いベストセラーを指す」そうです。短い書評集ですが、簡潔にして的を射た卓越した内容です。抱腹絶倒、快刀乱麻の斉藤美奈子節です。★が1~3つで各本を二つの視点で評価しています。1つ目は、古典になるかならないか、2つ目は現在でも役立つ本かどうかの評価です。1960年代から約40年のベストセラーの内容が要約されています。この要約だけで、もうそれらの本を読まなくてもいいというくらいです。
1960年代は以下の本が取り上げられています。「橋のない川★」、丸山真男「日本の思想★」、「キューポラのある街★」、「江分利満氏の優雅な生活★」、「私が捨てた女」、「感傷旅行」、「されどわれらが日々」、「白い巨塔★」、「天国にいちばん近い島」、梅棹忠夫「文明の生態史★」中根千枝「タテ社会の人間関係」、「あゝ野麦峠」、「青春の蹉跌」、「どくとるマンボウ青春記★」、「赤頭巾ちゃん気をつけて」、「文明の生態史」は居酒屋の与太話、「タテ社会の人間関係」は意味不明とのことです。読みたい本はありませんでした。(★は古典になりそう)
1970年代は「日本人とユダヤ人」、「20歳の原点」、「甘えの構造」、「サンダカン8番娼館」「恍惚の人」、井上ひさし「青葉繁れる」、「日本沈没★」、「自動車絶望工場★」、灰谷健次郎「兎の目★」、「スローなブギにしてくれ」、橋本治桃尻娘★」、「知的悪女のススメ」、「四季奈津子」、「原発ジプシー」、「ジャパンアズナンバーワン」です。「日本人とユダヤ人」「甘えの構造」「四季奈津子」「ジャパンアズナンバーワン」酷評です。「兎の目」の評価が高いですが読むことはないと思います。「桃尻娘」だけは読みたいです。
1980年代~は「蒼い時・山口百恵」、「悪魔の飽食★」、「なんとなくクリスタル★」、「窓際のトットちゃん★」、「気配りのススメ」、「ルンルンを買っておうちに帰ろう」、「見栄講座」、「ひとひらの雪」、「構造と力」、「良いおっぱい悪いおっぱい」、「部屋の中の懲りない面々」、「極東セレナーデ」、「ノルウェーの森」、「キッチン」、「NOと言える日本」、司馬遼太郎「この国のかたち」、「清貧の思想」、「マディソン郡の橋」です。「ひとひらの雪」「ノルウェーの森」は酷評です。「構造と力」は意味不明との評価です。「蒼い時・山口百恵」だけは読みたいです。備忘します。

文学研究の世界で古典と言ったら、上代から近世までの文学のことで近代以降の作品は古典と呼ばれない。とはいえ夏目漱石森鴎外は現代人の感覚では十分古典だろう。長い間読み次がれて、普通普遍的な価値を持つ本、それがここでいう古典である。一方、中古典は歴史的な評価が今のところ定まっていない本である。それが古典に昇格するか否かは、現時点では神のみぞ知るである。ページ1