メンター その2

何年か前にお亡くなりになった里見氏の話を書きます。20数年前のある日、日曜出勤をしました。仕事が一段落して昼過ぎに雑談になり、そのまま夜遅くまで二人で議論しました。「仕事は白と黒の判断だけではいけない、何もしないという判断を加えると上手く行くようになる」と教えてくれました。その頃、「おかしい、矛盾している」と上層部に対し、いつも怒っていました。「君は気魄、説得力ともに優れているが、40歳になるまでその力を社内で使うと小さくまとまった人間になってしまう。40歳を超えたら縦横に使いなさい」と言われました。その教えは守ったつもりです。それまでの行動は後ろに回って足払いの作戦が多く、「小利口」といわれていました。その後の約10年間は正面からいくので負け続けでした。今も、よく負けますが、長い目で見ると勝つことが多くなってきました。「君の欠点は人が優しいことだ、冷徹にならないと仕事はうまくいかない。だけど心の底では優しさを忘れないように」とも言われました。気が小さく、自信がないゆえの優しさを鋭く指摘されました。彼は人心掌握の術を心得ていました。貶めず、心を開かせてから核心をつく人でした。今思うに、茫洋としながら、その仕事能力の高さは普通ではなかったと思います。4年間薫陶を受け、彼は私の一部になっています。桐原氏に続く私の第2のメンターです。

残念なことは、彼の葬儀に参列できなかったことです。年賀状を出したら、奥様から亡くなった旨連絡がありました。誠に申し訳ないことです。