となりの闇社会

「となりの闇社会」を読みました。暴力団だけではなく詐欺師たちの手口を詳細に描いています。たいへん勉強になりました。以前、何気なく歩いている人の前や後ろやらに大きなものが落ちてくる保険会社のコマーシャルがありました。本人は気づかないが、実はいろいろな災厄に見舞われる可能性があることを示唆していました。知らぬが仏とはよく言ったものです。
居座り屋の手口の鮮やかさに驚き、AIJ投資顧問会社の闇の深さに恐怖しました。これからは飲み屋さんでの一言にも気をつけなければいけないと思いました。備忘します。

暴力団や闇の紳士に対する取材経験で得た知識やノゥハゥを披露、伝授することで、おのおのトラブル対応“危機管理マニュアルの一助にしてほしいと願つてやまない。…闇社会はいま、あなたのとなりで笑つている―このことに早く気づくべきである。(p.10)
ここでもつとも怖いのは、暴力団をはじめ闇社会の面々が一般市民を装い、同じような顔をして、巧みに社会生活のなかに紛れ込むことである。…バリバリのやくざはともかく、いまや企業舎弟、ましてや「共生者」や「密接関係者」と、一般企業人との境はなくなりつつある。穏やかな紳士然とした風貌や、一流大学卒業、大手金融•証券会社OBといった経歴を見るかぎり区別はつかない。そうした面々が気づかぬうちに企業内や地域社会に食い込み、まるでシロアリのように、ひそかに少しずつ貪り尽くしていくのだ。(p.25)
これらはもちろん違法だが、決して「金を出せ」とは言わない、フロント企業として組織的かつ法の網の網の目を潜って巧妙にやっているから、なかなか尻尾をつかませない。それでも、現在の総務部や消費者窓口で最も恐ろしいのは、こうした「プロ株主」でも「特殊株主」でもなく、じつは「モンスタークレマー」なのだという。(p.62)
返金要求への対応を見て、犯行の手応えをつかむ。前述したような理不尽な要求は、たんなる下見で小手調べであり、べつに要求が通.らなくてもいいのである。会社側の対応が甘いとか、経営姿勢がことなかれ主義だと見極めるや、いつせいに集中攻撃を浴びせるのだから、並大抵の覚悟では太刀打ちできないだろう。…じつは、通信販売業者が標的にされるのは、返品特約以外にも大きな理由がある。多くの通販業者は全国に支店網などの販売拠点をもっていないので、消費者からの苦情を受けても、一つひとつ現地に担当者を派遣し、親身に対応することはできない。もしそんなことを始めたら、全国に店舗をもたず、人員を配置しないですむ通信販売の利点が失われ、利益が生まれなくなってしまう。(p.66)
生活保護受給者の医療費は全額、公費で賄われる。つまり、各自治体が受診料を支うたため、まったく負担がかからない受給者本人は『夕ダだから』と、平気で連□通院してくる。診療所側も医療費を取りっぱぐれる心配がないし、検査や投薬をいくらでも請求できて大歓迎。病院に『必要な医療行為だ』と主張されれば、行政側も簡単には指導できないし、医者と患者が組んで税金を食い物にされてはどうにもならないのが実情です」(P.119)
民主党政権って、働く者には厳しいけど、働けない者には優しいんで助かるで」…暴力団が実質的に運営する貧困ビジネス「囲い屋」グル礀プのリーダーは、そうつぶやいた。もともと闇金融の取り立てや振り込め詐欺集団のサブリーダーを務めていたが、生来の気の弱さもあつて、ニ年ほど前からいまの仕事に就いたという。「西成の貧困ビジネスの連中は生活保護受給者をタコ部屋のようなところに押し込めて、保護費を全額没収し…(P.131)
かつて彼らのターゲットはカネ余りのセレブ家庭が中心だった。が、いまや独り暮らしのお年寄りや老老介護の老夫婦家庭、離婚したか婚活中と目される独り身の女性、小ガネがほしい主婦ら、ごく一般的な庶民層をねらって跋扈している。(P.145)